前回まではこちら
奈良醸造オンラインストアでも好評販売中、ジャーマンエール「OPTIMA」。
春にリリースした「FUTURA」に続き、フォントにちなんだビール名となっています。
.
そして、春に引き続き、「ALE & BOOKS」も行います。
今回は、「ビールと読書」をテーマに、お一方にじっくりとお話を伺ってみました。
対談相手は地元・奈良県大和郡山市の柳町商店街にて、2014年より書店「とほん」を営まれている、店主の砂川昌広さん。
秋の夜長、ビールのお供になるようなお話がたくさん聞けました。
.
ビールと本
#3 飲んだり読んだり。ぼくたちのビールと本。
ビールを造ることと飲むこと、本を読むことと売ること。個人的に好きなものを、商材としても扱うふたりそれぞれの立ち位置の取り方が垣間見えた、3回目の「ビールと本」。奈良醸造代表の浪岡安則と、本屋・とほん店主の砂川昌広の対談の最終回です。
砂川
ぼくは前の勤務先が店を閉めたため自分で始めましたが、浪岡さんは違いますよね。どうして醸造所を?
.
浪岡
ぼくの好みのビールに出合いたかったので。「こんなのおいしそう」と思い立ったらすぐ試してみる。小回りが利くところを奈良醸造の強みにして。
.
砂川
うちは嫁とふたりでやってますが、奈良醸造さんはチームワークが良いなあと。
.
浪岡
醸造所を始めるとき、5年後10年後どうなっていたいか考えました。いろんな人が関わってくいる場になっていてほしかった。これファミコンゲームみたいだと思って。クラフトビールのこれからは、ゲーム業界が辿ってきた歴史に重なるんじゃないかと思ってるんですよね。
.
─ ハードもソフトも目まぐるしく進化するような?
.
浪岡
最初、少人数で始まったんですよね。で、同じことを繰り返してずっと売れるものではない。数年後を見据えたら、より高度なことを求められるようになる。より多様なジャンルで。それぞれ得意なことを出し合えないと、対応できなくなります。デザイン担当する人必要だなとか。だってぼく絵心ないし。
.
砂川
奈良醸造さんは、役割分担が上手く機能していて、そういうところすてきだし、羨ましいです。
─ ふたりとも寝ても覚めてもビールや本のことを考えている感じですか?
.
砂川
オンオフありますよ。休みの日は公園で本を読みたい。
.
─ なるほど……?
.
浪岡
むかしは家でもビールばかり飲んでいましたが、今は日本酒です。
.
砂川
オンオフの切り替えみたいなとこあります?
.
浪岡
あります。ずっと最新のビールを追いかけていられないし。日本酒だとオフできる。はずだったんですけど、最近、日本酒を飲んでいてもアルコール度数を測りたくなり、職場から測定器持って帰って来ようとしててやばい……
.
─ もはや性癖。
.
砂川
ふはは! ぼくは、ぼくが読みたい本と、店で薦めたい本は違います。それと、うちは小さい本屋ですが、ぼく個人は大きな本屋に行って、店内をくまなく歩き、本を探すのが好きです。でも、うちに来てくださる方は、何を読めばいいのかわからない、でも何か気に入るものがあるかも、ということが多いように思います。棚づくりはそれを念頭に。趣味のど真ん中は海外小説ですが、開店当時からそこはごくわずかしか置いてないですね。
─ 店の本棚と、家の本棚は違う?
.
砂川
だと思います。
.
浪岡
砂川さんが好きで、お店に置いてある本というのもありますか?
.
砂川
全然好きと思えない本は置かないので、それぞれ好きな点はありますが、1冊挙げるとしたら、長田弘『読書からはじまる』です。「読書というのは書を読むこと、本を読むことです。読書に必要なのは、けれども本当は本ではありません。読書のためにいちばん必要なのが何かと言えば、それは椅子です。」という一文があって。何を読むかではなく、読む時間をどう過ごすかが大切だと書かれていました。これを読んで椅子を探し出しました。
.
浪岡
わかります(笑)
.
砂川
本屋としても影響を受けて、これがいい本、これが悪い本というのでなく、本を読みたいと思ってもらえるような、本を読む時間いいですよねという気持ちが伝わる店を作れたらと思います。
.
浪岡
ビールも「おいしい」という味覚だけでなく、ビールを飲みながら、どういう時間を過ごしたのか、その時間の価値というのがあるだろうなと。味の記憶って難しい。だからそこを価値観の中心に置くと忘れられがちなのではないかな。
─ 本の内容は記憶に残りやすいものですか?
.
砂川
ぼくはすごく覚えてないです!
.
─ そんなきっぱり……
.
砂川
フィリップ・K・ディック好きなんですが、ストーリーとかあまり覚えてないんですよね。でもすごく面白かった!という読書体験はずっとあって、また読みます。それも良い読書だと思っています。覚えていないことが読書の楽しさを目減りさせるわけではないので。
.
浪岡
「味は覚えていない」と「おいしかった!また飲みたい!」も両立しますね。クラフトビールが日常になればいいなと思うけど、現状は酔うための手段ではなく、特別な時に選んでもらうお酒なのかなと思うし、お酒がメインでなく、生活に寄り添い、彩りとなればと思います。俺が俺がとならず、食事や本と合わせるなど、時々のシチュエーションで、いろんな提案ができる存在であれたら。
.
砂川
今回の「OPTIMA」は、ぬるくなってもおいしいビールがあるのか!と、だいぶ驚きました。
.
浪岡
意図したことができていて良かったです。「ゆっくりと飲んでもらいたい」と思って造ったビールです。
.
砂川
この秋冬は部屋をあったかくしてゆっくりと飲んで本を読もうと思います。まあ、読めないときは読めないでいいかな。『読書からはじまる』ともう一冊、愛読書であり、本屋をやるうえで影響を受けているのが、 管啓次郎『本は読めないものだから心配するな』なんですよね(笑)
最後までお読みいただき、ありがとうございました!