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本日(10/23)から奈良醸造オンラインストアでも販売開始となる、奈良醸造のジャーマンエール「OPTIMA」。
春にリリースした「FUTURA」に続き、フォントにちなんだビール名となっています。
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そして、春に引き続き、「ALE & BOOKS」も行います。
今回は、「ビールと読書」をテーマに、お一方にじっくりとお話を伺ってみました。
対談相手は地元・奈良県大和郡山市の柳町商店街にて、2014年より書店「とほん」を営まれている、店主の砂川昌広さん。
秋の夜長、ビールのお供になるようなお話がたくさん聞けました。
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ビールと本
#2 すこしはなれたところで
「嗜好品であり、手放せないもの」としての「ビールと本」。流行り廃りとの意識的な距離に、自分たちの考えやペースで商品を提供していくのにちょうどよい中心からの物理的な距離、というのを考えるのは大事なことかもしれない、という話をしているかもしれない第2回目の「ビールと本」。
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砂川
ビール醸造所が増えた理由ってあるんですか?
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浪岡
こんなに醸造所が増えるとは思わず、むしろ流行りも廃りもないだろうとビール造りを始めたはずなんですが(笑) 大括りな話をしますと、地域活性的なものと相性が良かったというのはあるかもしれません。
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砂川
わかる気が。
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─ そういえば、奈良醸造、とほんとも、奈良の観光や経済の中心地から外れたというか、少し距離を置いた場所にありますね。この物理的な距離のおかげで、自分たちの考え方やペースを守られるといったことはありますか?
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浪岡
あると思います。
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砂川
人通りは多いほうがいいですが(笑) そういえば「独立系書店」というのも外国のインディペンデント書店という呼び方の翻訳というか。クラフトビールと本屋の状況は少し似てます?
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浪岡
そうかも。ぼくはお酒は時代を超えた普遍性があると思ってて。嗜好品であり、手放せないもの。ビールと本は、そこも共通点では?
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砂川
おお。
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浪岡
酒も本も、禁止されれば密造する人が出てくる。なくても死なないけれど、ないと貧しくなるもの。
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砂川
レイ・ブラッドベリ『華氏451度』の世界だ。
浪岡
砂川さんはどうして本屋さんを始めたんですか?
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砂川
勤めていた新刊書店が潰れて。ぼくの夢は、その書店で定年まで勤務することでした。難しいだろうとも思ってましたが。次の勤め先になる書店を探しましたが正社員の求人はまあなくて、自分で開業することに。よく「夢をかなえて本屋さんになったんですね!」と言われますが、ちょっとそうではないですね(笑) 「夢をかなえた」というの、奈良醸造さんも言われませんか?
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浪岡
はい(笑)
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砂川
流行りも廃りもないというのに通じるのかな。本は、すでにある程度のクオリティが保たれた商材です。話題性を追わず、地道にやっていきたいなと思っています。一般的な本屋のトレンド、いわゆるベストセラー作家や人気タレントさんの最新作みたいなのは、もともと、とほんでは売れない。逆に「独立系書店によくある」本や出版社のものは期待されています。その期待にお応えしたいのはもちろんありつつ、でも、だからといってのべつまくなしに並べるのではなく、「とほんらしい」と感じてもらえる棚になるように、5年後10年後も大事に読める本を一冊一冊選書したいと思っています。
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浪岡
ビール業界も「こういうのが人気」「これを造れば売れる」というのはあるんですよ。でも今回の「OPTIMA」は、そういう流行に乗っからず、例えば本を読むときに飲むならこういうものがいいなと造ったものです。
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砂川
うちは、人気の本、最新作はあまり入らない店です。そうだし、そう言いたい。最新作は入らなくても、その作者さんの既刊で良書があるなら、それをしっかり並べたい。カルチャーの最先端を売るお店があっていいし、新しさやトレンドで挑まない店もあっていいと思ってます。
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─ 世の中に「価値観のアップデート疲れ」というのがあるそうで、今の話で、それ思い出しました。
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砂川
なんと! 広島の書店員さんで尊敬してる人がいるんですが、彼が「アップデート!と言うけれど」という書籍フェアをやってて、さすがだなと思ってたところです(笑) あれ、このビール、ぬるくなってるけどめっちゃおいしい!?(ゴクリ)
浪岡
15分くらい経って少し温度が上がってきたときにおいしいものを意図しました!
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砂川
狙ってそんなことができるとは、わけがわからない…。ぬるくなっておいしいの、秋の読書にぴったりですね。個人的には、読書の春、読書の夏、読書の冬と思ってるので、秋以外も読みたいし飲みたいです(笑)
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浪岡
ありがとうございます(笑)
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砂川
谷川俊太郎がお好きとのことでしたが、ほかにはどんな。思い出の一冊とか。
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浪岡
学生時代、俵万智『チョコレート革命』のサイン会に行ったことがあって。
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─ チョコレートは秋冬のビールに合いそう!
浪岡
限られた組合せで「言葉ってすごいな」と思わせてくれます。あ、でも学生時代の一番の愛読書は『地球の歩き方』かも。
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砂川
バックパッカー?
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浪岡
ほとんど。旅行記や紀行文、好きです。
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砂川
何か国くらい?
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浪岡
20か国ぐらい行って、それからは数えるのをやめました。
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砂川
かっこいい!
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浪岡
と言ってる人がいてかっこよかったので、真似しました(笑)
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砂川
あ、もしや沢木耕太郎『深夜特急』を読んだり?
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浪岡
それもですが、むしろ猿岩石ですね! 彼らの旅は『深夜特急』で旅したルートを同じように辿ってバラエティ化したもので、相当影響を受けました。あまり言いたくないけど(笑)
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3回目に続きます。