アルコール度数が9%や12%といったアルコール飲料からの揺り戻しのように、最近、微アルコールと呼ばれるジャンルがブームの兆しを見せています。
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クラフトビールの世界では、度数が5%を下回るセッションIPAと言われるビアスタイルが存在していますし、近年ではそれをさらに下回るSmall Beer、なかでもIPAに限って言えば、Micro IPAと呼ばれるスタイルが登場。世界中のブルワリーがこれに挑戦してきました。
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アルコール度数の低いビールを造るだけであれば、ビールの原料となる麦芽(モルト)の使用量を下げればよいのですが、そのぶん、飲み口が軽くなり(水っぽいなんて言われたりもします)、物足りなさを感じてしまいがちです。
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では、このような物足りなさは無く、かつ、アルコール度数の控えめなビールはどうしたらできるのか。
これはブルワー(醸造家)の腕の見せどころだったりします。
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奈良醸造では、過去にTable Session (2019年、ABV4.9%)、Microcosmos (2020年、ABV3.5%)と、二度に渡り、この課題に挑戦を重ねてきました。
7月に発売された、コミック『琥珀の夢で酔いましょう 第4巻』でも、奈良醸造における低アルコールに対する思いについて、醸造責任者の浪岡の口から語らせていただいていますが、ちょうどその直後となる神奈川県茅ヶ崎市のBarbaric WORKSとのコラボレーションとなる『Coconut Boys』は、そういった思いを踏まえて、飲みごたえと低アルコールの両立という、一見矛盾した取り組みに更に踏み込むことにしました。
Barbaric WORKSの永石さんが得意とする、これまで手掛けられた低アルコールのビール造りのノウハウを教わりつつ、飲み手の満足度を裏切らないものを造れるかどうか。
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まずは、使用する麦芽の量。
低アルコールのビールにありがちな水っぽさのないように、使用する麦芽の量は大きく減らしていません。これにより麦芽の風味がしっかりとした麦汁を取ることができました。この麦汁の中にある糖分を、ビール酵母が食べることでアルコールが生み出されます。糖分を食べる力が強い酵母を使えば、アルコール度数が高くドライなビールが出来上がります。今回は逆に、糖分を食べる力があまり強くない酵母を使うことで、アルコール度数が低く、ボディがしっかりとした仕上がりにしました。
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そして、最後にココナッツを使用することで、ホップの香りとも相まったトロピカルな味わい、アルコール度数2.5%のMicro IPAに仕上げることができました。
醸造ノウハウの交換だけでなく、普段はできない意欲的な取り組みができるのもコラボレーションの醍醐味。
『Coconut Boys』、ぜひお楽しみください。