“MACGUFFIN”とは、何か?
その言葉は、物語をすすめるキーアイテムやキーパーソンのことを指します。泥棒が狙う宝石だったり、スパイが守る機密書類だったり、不思議な力を持つ謎の黒幕だったり…。中身はよく分からないけれど、物語の核となる重要なものを指します。サスペンスの名手である映画監督、アルフレッド・ヒッチコックによって広まり、いまも小説や映画の技法として使われている言葉です。
中身はなにかわからない、誰も知らない、でも重要なもの。奈良醸造の「MACGUFFIN」も、「誰も知らない、でも奈良醸造を先に進めるビール」になることを願って、2022年から毎年この名前のビールをリリースしてきました。今年でちょうど5本目。あらためて、これまでの歩みを振り返ってみましょう。

2022年は、パイナップルとココナッツを使ったスパイス香るフルーツエール。
2023年はカクテルに着想を得て、イングリッシュブラウンエールをベースに脱脂粉乳、バニラ、アニス、カカオを使用しました。350ml缶は窒素充填のナイトロ缶で仕上げたナイトロ缶仕様でリリースしました。
2024年は、Graffと呼ばれるビールの麦芽の風味にリンゴの爽やかさを融合させたハイブリッドなビアスタイルに、燻製麦芽とシナモンを組み合わせ、スモーキーなアップルパイを表現しました。
2025年のスタイルは、チリマンゴーサワーエール。着想源は、メキシコ原産の蒸留酒・メスカルを使ったカクテルでした。ほのかなスモーク香をまとったマンゴーの甘やかな香りに、マンゴーとリンゴ酢が織りなす甘酸っぱさ。後味に残るほんの少しの辛味が爽やかさを演出する一杯となりました。
4年分を並べてみると、フルーツ、カクテル、アップルパイ、メスカルと、同じ名前のビールとは思えないほどバラバラです。でも、それこそが「MACGUFFIN」。毎年、自分たちにとってもまだ知らない一杯に挑むことが、奈良醸造を少しずつ先へ進めてくれているのだと思います。
そして今年、2026年の「MACGUFFIN」のスタイルは「AMARO INSPIRED BEER(アマーロインスパイアドビール)」です。
アマーロとは、イタリア語で「苦い」を意味する言葉。ハーブやスパイス、草根木皮をアルコールに漬け込んでつくる、苦味のある薬草酒の総称です。カンパリやアペロールといった名前を聞いたことがある方もいらっしゃるかもしれませんが、これらのお酒も広い意味ではアマーロの仲間に数えられます。
ベースはVienna MaltとPilsner Maltで仕込み、ホップにはMagnumを使用。そこに、「天使のハーブ」とも呼ばれるアンジェリカやオレンジピール、コリアンダー、カルダモン、シナモン、キャラウェイといったハーブやスパイスをブレンドして、アマーロを表現しました。さらに生のビーツをあわせて漬け込むことで、アマーロ特有のアーシー(土っぽい)な風味と、赤い色味を加えています。
グラスに立ち上がるのは、オレンジピールを主体とした柑橘の香り。そこにカルダモンやコリアンダーの爽やかなスパイスの香りが奥行きを加えます。口に含むと強めの炭酸が弾け、追いかけるようにハーブとスパイス、ビーツが層をなし、土っぽさとも受け取れる野性味のある味わいが広がります。
飲み干したあとには、カルダモンやシナモン、クローブを思わせる、甘さを予感させる香りが鼻腔に残ります。そして舌の上には、ホップとはまた違った長い苦味の余韻。そのさまは、まさにアマーロの印象そのものです。
そのまま飲むのはもちろん、アマーロのように氷を入れて楽しむのもおすすめ。様々なハーブとスパイスが織りなす味わいを、ぜひ自由に楽しんでみてください。

そして来年はどんなビールになるのか…その答えはまだ、誰も知りません。どうぞ楽しみにお待ちください!








