ドライな飲み口のBrut IPA「POCKET(ポケット)」。奈良醸造のブルワーたちがひとりずつレシピを提案してきたIPAシリーズの最終章です。なぜ今このスタイルに挑戦したのか?レシピを手掛けたブルワー・佐久間に醸造の経緯や想いをインタビューしました。
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——Brut IPAはあまり最近では見かけなくなったスタイルですが、なぜ今造ろうと思ったのですか?
2024年に、アシスタントブルワー3人の共作で「AWAKENESS」というIPAのレシピを書きました。かなりドライな造りにしたのですが、ありがたいことに好評で、とても嬉しかったのを覚えています。もう一度ドライなIPAに挑戦しようと思い、今回の「POCKET」のレシピを書きました。2025年のIPAは奈良醸造のブルワーがそれぞれにレシピを担当しているのですが、先行してリリースされていた「DOT」、「LINE」、「FACE」が比較的ボディのしっかりしたIPAだったので、思い切って逆側に振ろう!と考えたのも理由の一つです。
——今回レシピを造るにあたって、どのようにレシピを考えていきましたか?
昨今、このスタイルを造っているブルワリーがほとんどなく、事前情報を集めるのに一苦労しました…。そこでBrut IPAが誕生した2018年頃の文献に遡って確認し、当時のレシピを現代風にリビルドすることからスタート。比較的高いアルコール度数、すっきりとしたボディ、明るい液色、大量のホップ…これらを前提として、どうやったらバランスのいいビールに仕上がるだろうか?と思案しました。苦さを抑え、ボディを少し補強すればこのスタイルのアイデンティティを損なわずにおいしいIPAが造れるのではないかと考え、実際のレシピに落とし込んでいきました。
——醸造にあたり特に工夫したポイントはありますか?
ホップの選定にとても悩みました。ピーチやパッションフルーツの香りのホップをメインに据えると、香りは糖度の高いフルーツであるものの、ビールはドライに仕上がっている、という矛盾が起きてしまう気がしたので、柑橘系の香りを持つホップに絞って選定を開始しました。結果的にはCentennial、Citraというクラシカルなホップ構成にCashmereを足しています。
——実際に完成した「POCKET」を飲んでみていかがでしたか?
発酵がスタートしてから何度かテイスティングしましたが、ホップを複数回に分けて投入することで、多層的なフレーバーをつけることができたと思います。柔らかな飲み口ながらも、高めに設計したアルコール度数、強めにかけた炭酸によって飲みごたえもあり、イメージ通りのビールに仕上がりました。
——どんな場面で、どんな食事と合わせて飲んでもらいたいですか?
少し前にリリースしたアルコール度数わずか3.0%のマイクロIPA「FACE」から一転してハイアルコールなビールです。飲み比べるととてもおもしろいと思いますので、ぜひ並べて飲んでみて欲しいです!また食事で「POCKET」と合わせるならタコスやチリコンカルネなど、メキシカンを食べながら飲みたいです!また、缶のラベルもとても素敵に仕上げていただきました。ぜひ手に取ってみてください。

「POCKET」は現在、全国の酒販店やレストランで販売中です。また奈良醸造のオンラインストアでは、「FACE」と「FAKER HOLIC」とのIPA PACK も販売しています。ぜひ合わせてお楽しみください。
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