奈良醸造が醸造を開始してから3周年。
3周年を記念してリリースするビール「STAIRS」の日本語訳は「階段」。今後ものぼり続けて行ってくれ!という思いで、奈良醸造ファンを代表し、奈良醸造の代表兼ヘッドブルワーの浪岡安則さん(写真右)と共同創業者・セールスマネージャーである谷垣幸太さん(写真左)にお話を伺いました(最終回)。
(interviewer・金子ゆか)
忍耐と挑戦の3年目、そしてこれから ―step3― (2020.4~)
―――2020年は様々な業界が耐えていた年だったというのは言うまでもありません。飲食店がストップしてしまえば、もちろん樽の注文もストップしますよね。当時の状況はどうでしたか?
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谷垣「2020年4月、本来なら注文を受けて全国へ配送されるはずだったビール樽が、冷蔵倉庫内に高く積み上がっている状況でした。奈良醸造が取った策は樽のビールを缶に移し替えて販売をするということ。オンラインストアも急遽整備しました。」
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浪岡「ゴールデンウィーク返上でその作業をしていた記憶があります。」
―――缶ビール製造機を新しく導入したのですか?
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浪岡「いえ、それまでのボトルを詰める機械でも缶ビールは造れるので。まずはオンラインストアのみからスタートし、数量限定の形で展開していきました。缶を始めたことで缶ビールだから手に取るというお客様がいることを知れたので良かったです。」
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谷垣「結局2020年夏には一度は世の中が戻りだして、飲食店からの注文も徐々に増えました。正直、2021年の酒類提供禁止の状況の方が事態はより深刻ですね。」
―――2020年中頃から異なる業界とのコラボレーションなど、どんどん新しいことに挑戦しているイメージがあります。
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浪岡「コラボに関しては醸造設備のクセがある程度わかってきたので、お受けできることが増えました。大和橘を使ったビール『PHILHARMONY』は今のベルジャンウィットというスタイルで、当初から造りたいなと思っていたんです。ただ、繊細なビールなので開発にかなり時間がかかってしまいました。」
谷垣「樽だけではなく、ボトルや缶で展開できるようになったのは大きいですよね。経験を重ねる中で、そういった挑戦が奈良醸造のキャラクターや振り幅のひとつとして認識してもらえるようになってきたのかなと思っています。」
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浪岡「何を作っても奈良醸造らしいと思ってもらえたら、何でもチャレンジしやすいので。チャレンジできる土壌を3年かけて作ってきた気がしています。」
新型コロナウイルス感染症によって、飲食業界を含め苦しい状況は今もなお続いています。しかし苦肉の策で進めた缶ビール販売などにより、一層奈良醸造のビールを手に取ってもらえる機会が増えたのは確かです。2021年からは新たな機械を導入。現状最小サイズである350ml缶ビールの発売もスタートしています。
様々なスタイルのビールを、カジュアルに手に取ってもらえるようなきっかけ作りができれば……と常に知恵を絞っている奈良醸造。地元の人に愛されるビールになること、そして県外で奈良醸造のビールと出会って奈良を想う人が増えますように。そう思い描いて今日もビール造りに励む奈良醸造に今後も注目してください!