奈良醸造が醸造を開始してから3周年。
3周年を記念してリリースするビール「STAIRS」の日本語訳は「階段」。今後ものぼり続けて行ってくれ!という思いで、奈良醸造ファンを代表し、奈良醸造の代表兼ヘッドブルワーの浪岡安則さん(写真右)と共同創業者・セールスマネージャーである谷垣幸太さん(写真左)にお話を伺いました(第2回/全3回)。
(interviewer・金子ゆか)
注目していただいた醸造1年目、広げることを意識した2年目 ―step2― (2018.6~)
―――免許交付から2日後の2018年6月23日にはファーストビールの仕込みをスタートしたそうですね。この時、ビールのことがわかるのは浪岡さんだけだったのですか?
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浪岡「そうですね。配管トラブルがないかとか、工場の施工業者さんも立ち会いの下で作業は行ないましたが……。初めて動かす設備でのビール仕込みは、本当にうまくできるんだろうかと緊張しました。」
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谷垣「今聞くと恐ろしいですけど……。」
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浪岡「ぶっつけ本番でかなり張り詰めていました。今でもビール仕込みの前日は緊張します。初仕込みで最初のハードルを越えたとき、麦汁が取れたときはホッとして涙が出たくらいです。」
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谷垣「1年目はファーストビール『PUBLIC PRESSURE』をはじめとして、新しい醸造所ということで注目していただき、飲食店の皆様からのリピート注文が励みになりました。」
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―――醸造スタートから1年弱は業務用の樽販売のみで主に飲食店向け。その後、瓶内二次発酵のボトルビール「N BOTTLE CONDITIONED」シリーズの販売がスタートしました。この計画は当初からあったのですか?
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浪岡「ありました。自分が公務員を辞めた時にはこんなに醸造所が増えるなんて想像していなかったんですよ。2015年くらいからビール造りを始める人が爆発的に増えて、奈良醸造はその中でも後発組だなと認識しました。今では奈良県内にも8つの醸造所があります。だから他の醸造所と同じことをやっても意味がないし、誰もやっていなかったことをやりたいなと考えていました。」
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―――ビールをボトルに詰める際に酵母と糖分を入れ、時間の経過と共に味わいが変化していくという、シャンパン造りと同じ手法を使ったビール。国内ではあまり例がないことに挑戦するのは大変ですよね。理論上通りスムーズにいくわけがなさそうですし。
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浪岡「奈良醸造の人員と規模で造ることができて、2,3年は常温保存できるので、工場としては取り回しのききやすい商品です。でもやはり実際造るとなると手探りの日々でしたね。当初は一日に出来上がるボトル詰め量が今の3分の1くらいの進み具合でしたし。」
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―――業務用の樽ビールだけでなく、ボトルビールも加わることで個人のお客様にも手に取りやすくなったのではないでしょうか。夏にはビアフェスを含め、地元のイベントにもたくさん参加されていましたよね。
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浪岡「1年目を通して思ったのは、奈良醸造はまだまだ全然知ってもらえていないなということです。今のままだとクラフトビールファン以外の人にはなかなか届きにくいと感じて、積極的にイベントなどを通して外に出ようとしていました。」
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谷垣「正直なところ、2年目は業務用樽の出荷量も横ばいで、やはりもっと知ってもらうことが重要だと。全国片っ端から、地元のイベントも大小関わらず出店していこうとしたのが2019年の取り組みのひとつです。」
浪岡「最初はイベントに出店してもまずビール屋だとすら思ってもらえませんでしたね。お客様にとって奈良醸造=ビールとイメージが結びつかないんだ…と思い知らされました。」
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谷垣「ビールのイベントだとそこまでではないんですけどね。例えば百貨店の催事に呼んでいただいた際には、本当にたくさんの人に奈良醸造のビールを飲んでいただきました。そうやって実感できる体験が、奈良醸造が広まっていっているんだという自信に繋がりました。」
第3回に続きます。