令和7年7月7日に7周年記念のビール”Faker Holic”をリリースしたのですが、実は7を合わせることを狙っていたわけではなく、社内でそういえば重なってる!という話が出てきてようやく気がついた次第。こういう小さなことを見落としているのは、四つ葉のクローバーを見過ごしているような感覚で、何かと目の前のことに追われていたことに改めて気付かされました。
7周年!だなんて言って、これまでの振り返りをここで長々と行うのはなんだかヤボなので、あえてやりません。1年目から奈良醸造を知って、飲んでいただいている方ばかりでなく、その後にクラフトビールを飲み始めて奈良醸造を知った方も多く、奈良醸造のイメージというのは皆さんのそれぞれで違うことと思いますが、その誰もが手に取ったことがないのが奈良醸造のHazy IPA。そりゃそうです。今まで造ったことがないんだもの。
ということで、奈良醸造で初となるHazy IPAです。
Hazy IPA、造るのが非常に難しいビアスタイルです。味わいは対極にあるのに、ある意味ではピルスナーなみに繊細なビール。ピルスナーが針の穴に糸を通すような感覚でバランスの落とし所を見つけていくのに対して、Hazy IPAはいろんな落とし穴を避けながらゴリゴリ進んでいくイメージ。
このビアスタイル特有の大胆かつ大量のホップ使いゆえに、失敗するとホップの渋みといったネガティブな面がすぐに見えてしまうし、美味しくできても、酸素をきっちりと追い出しながら充填をしないと、すぐに酸化で味わいが変わってしまったり、酷い場合にはビールの色まで変色してしまう。さまざまなポイントをひとつずつクリアしていくには7年の時間が必要だった、というわけです。
とまあ、カッコつけるとそういう言い方になるのですが、造るのが怖かったというのが本音のところ。ホップがザラザラで苦くて渋いビールになったらどうしよう。濁らなかったらそもそもHazyじゃないけど、小麦・オーツ麦を使いすぎたら仕込みが大変そう、もしかしたら夜までかかる仕込みになったり最悪帰れなくなるかも。詰め方に失敗したら、ビールが台無しになってしまうのが怖いな。そんな課題を乗り越えるだけの蓄積ができていることをここいらでいっちょ証明してみせようじゃないか!(できるはず!たぶん。。。)と思って、仕込んだビールです。
で、そんな課題をクリアしたビールができました。と同時に、こういった恐怖心を乗り越えられ、ブルワーとしてまたひとつ大きくなれた気がしています。
普段さらりとビールのご案内をすることが多いのですが、ビールが完成に至るまでのブルワーとしての心の内側、たまにはお見せしてもいいんじゃないかと思って、筆を取った次第。
ともあれ、7周年を迎えられたことに感謝。
今日もビールがうまい。乾杯!!
奈良醸造 代表 兼 ヘッドブルワー・浪岡安則