MacGuffin(マクガフィン)とは何か?映画や小説において中身はなにかわからない、誰も知らない、でも重要なもの。そんな物語をすすめるキーアイテムやキーパーソンのことです。「誰も知らない、でも奈良醸造を先に進めるビール」になることを願って、2022年からこの名前のビールを毎年リリースしてきました。
一度、遡って毎年どんなビールをリリースしてきたのか振り返ってみましょう。

2022年の「MACGUFFIN」はパイナップルとココナッツを使ったスパイス香るフルーツエール。2023年の「MACGUFFIN」はイングリッシュブラウンエールをベースに脱脂粉乳、バニラ、アニス、カカオを使用。2024年の「MACGUFFIN」はGraffと呼ばれるビールの麦芽の風味に、リンゴの爽やかさを融合させたハイブリッドなビアスタイルに燻製麦芽とシナモンを組み合わせ、スモーキーなアップルパイを表現。
と、いずれも麦芽、ホップ、酵母の組み合わせだけでは表現ができない味わいのビールに仕上げてきました。「誰も知らない、いいビール」でないとMacGuffinじゃないので、昨年と同じでは意味がない、ということで今年のMacGuffinのリリースです。

ビールにトレンドがあるように、お酒の世界にはそれぞれの領域でトレンドというものが存在します。蒸留酒の世界ではここ数年、メスカルと呼ばれるアガベを原料とし独特のスモーキーな風味と香りが特徴的なメキシコ原産の蒸留酒がブームとなっています。
2025年の「MACGUFFIN」はそんなメキシコ原産のメスカルに着想を得て、グラスの中にメキシコのイメージを表現してみました。ベースのビールはVienne Malt主体のゴールデンエール。ハチミツや軽くトーストしたパンの印象をもつ麦芽です。こちらにメスカルの風味を再現するために、Peated Maltをブレンド。名の通り、大麦麦芽を乾燥させる際にピート(泥炭)を燃料として使用したモルトで、この煙で麦芽を乾燥させることで、麦芽にスモーキーで土っぽい風味が付与されます。
こちらをノルウェー原産のKveik酵母と呼ばれる酵母で(今年はDOTというIPAで使っていた酵母です)高温発酵させ、そこに大量のマンゴー、チリ(キャロライナ・リーパー)、リンゴ酢をブレンドして仕上げました。

どうでしょう?とてもとても情報量が多くて味わいが想像できない、なんて思われるかもしれません。そんな今年のMacGuffin、味わいについて説明すると‥グラスに鼻を寄せるとほのかにスモーク香をまとったマンゴーのトロピカルで甘やかな香りが感じられます。口に含むと、マンゴーとリンゴ酢のおりなす甘酸っぱさと、強めの炭酸による刺激の中にチリの辛味が見え隠れ。アフターテイストにはほんの少しの辛味が残り、それが却って夏の季節に爽やかさを演出する、そんな仕掛けになっています。
このビールのMacGuffinは何なんだろう?そんなことを考えながら飲んでいただけるとうれしいです!