時間と共に麦芽の風味がゆっくりと開く、「BIFUR(ビフュール)」。今回は、この「BIFUR」のスタイルである、ドルトムンダーにまつわるお話です。
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そもそも、世の中のビールは製法の違いから「エール」と「ラガー」に大別されます。歴史的にはエールの方が古く、ラガーは19世紀中頃からトレンドとなり、世界各地で大量生産されるようになりました。日本でも大手ビールメーカーから発売されるビールはラガーが多数を占めています。そのため、ラガーがビールの一般的なイメージとして定着しましたが、そこにカウンターカルチャーとして登場したのがクラフトビール。クラフトビールの主流はIPAに代表されるようにエールが中心でしたが、近年ではクラフトラガーも注目を浴び始めています。実はエールの種類がIPAからビター、トラピストビールなど多岐に渡るのと同様に、ラガーにも多様なスタイルが存在します。そこで、ラガーの多様性について考えてみたいと思います。
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クラフトビア・アソシエーションが発行する『ビアスタイル・ガイドライン2024』には、19種類ものラガーのスタイルが定義されています。例えば、チェコのボヘミア地方で生まれた世界初の黄金色のビール「ピルスナー・ウルケル」に代表されるボヘミアン・ピルスナー(それ以前のビールはほとんど褐色でした)。また、ボヘミアン・ピルスナーを下敷きに、ウッディでスパイシーさが特徴のドイツ産ホップを使い、ドライに仕上げたジャーマン・ピルスナー。漆黒の色合いと焙煎麦芽の香ばしさが楽しめるシュバルツ、ハイアルコールでコクのあるボックなど、色や香り、味わいは様々です。さらに近年では、アメリカやオーストラリア、ニュージーランド産ホップを大量に使ったインディア・ペールラガー(IPAのように苦みと香りが特徴的なハイブリッドスタイル)など、新しいスタイルも生み出され続けています。
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そんな多様なラガーの中から、「BIFUR」は秋・冬にぴったりなドルトムンダーというスタイルを選びました。ドルトムンダーはドイツ・ドルトムント地方発祥で、麦芽の風味が特徴。苦みや喉越しに加えて、麦芽由来のほのかな甘味とふくよかさが楽しめる奥行きのある味わいで、寒い季節にゆっくりと時間をかけて味わうのに適したラガーです。
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奈良醸造では過去にもいくつかの特徴的なラガーを醸造してきました。例えば、クラシックなジャーマンピルスナーをベースに、ノーブルホップでドライホップを行うことが特徴であるイタリアン・ピルスナー「MALKO」や、モルトの甘みとホップの苦みが絶妙なバランスを持つアンバーラガーにネパールの山椒であるティムルを加えた「TIMMUR」など。
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奈良醸造では今後も多様な味わいのラガーを醸造していく予定です。「BIFUR」は秋から冬にかけてゆったりと飲んでもらうことを想定して造ったビールなので、ぜひ読書などしながら味わってみてください。