ALE & BOOKS 「ビールと読書」
.
3冊目は、今回のALE&BOOKSのロゴも手掛ける、butterの久保さんです。
.
『アホウドリの迷信 現代英語圏異色短篇コレクション』
著者 / 岸本佐知子 (翻訳), 柴田元幸 (翻訳)
出版社 / スイッチ・パブリッシング
.
.
奈良醸造では、ロゴから始まり、グラスや、いつものビールについているデザインなどをしているbutterの久保元気です。
.
今年のジャーマンエール「Garamond(ガラモン)」を飲みながら楽しむ一冊に選んだのは、『アホウドリの迷信 現代英語圏異色短編コレクション』です。
.
この本は、英文学者の柴田元幸と翻訳家の岸本佐知子のお二人が、互いに「短編・まだ未翻訳・そして、ちょっと風変わりな」作品を、それぞれが翻訳した海外短篇小説アンソロジー。掲載されている作品は、どれもすこし何かおかしい。
.
掲載作のタイトルは以下のようなもの。「オール女子フットボールチーム」「大きな赤いスーツケースを持った女の子」「アホウドリの迷信」「足の悪い人にはそれぞれの歩き方がある」「野良のミルク」「名簿」「あなたがわたしの母親ですか?」「アガタの機械」「引力」「最後の夜」。
.
脱線しますが、毎年、色々なゲストや友人にお願いしているこの「ビールと読書」はとても面白く、楽しみにしているのだけれど、選書をお願いする準備をする時期になるといつも考えることがある。
.
ビールも飲むまではどんな味なのかわからないし、本も読むまでは、面白いのかわからない。ああ、これは!と嬉しくなるような美味しいビールや、面白い一冊に巡り合うこともあれば、なんじゃこりゃ?!とがっかりすることももちろんある。
.
そんなよくわからないものの中から、手探りで自分の好き(かもしれない)ものに出会うには、自分がどうしているのかなということ。
.
例えば、そのビールを作っている人や、それを支えている人の、ビールに対する考え方やお酒との関わり方が好きな人のものを選んだり、面白い視点や言葉で本を書いている作者や、それをまとめて、サポートし、届ける出版社の名前を見て選ぶこともある。または、品質よく管理して、なるべく嘘のないラインナップを取り揃える酒屋やボトルショップ。自分とは全く違う視点や視座をもって、本を選び集めている書店。そんな中から、ちょっと自分の気に入りそうなものを、選び、手にしている。
.
つきつめると、ようは、誰に薦められたか、選んでもらったかが、自分にとって価値の多くを占めているんだな、と。
.
年々、IPAなのかサワーなのか?どんなスタイルのビールかよりも、誰がどんな考えで造って、美味しいよと薦めてきたビールかの方が、僕にとっては楽しいし、何が書かれているか・どんなジャンルの文章なのかよりも、ニヤニヤとこれ面白かったよと好きな友人や書店で薦められた一冊かを大事に思ってる。
.
なので、毎年この選書企画で、全然知らなかった一冊を、好きな人たちから薦められて、全然知らないまま読むのは、楽しみなのです。
.
『アホウドリの迷信』に話を戻すと、各作品を紹介するのはすごく難しいし、できれば避けたい。掲載されている8人の作家の11偏は、いずれもまったく異なり、物語がどこから始まって、どこにいくのかさっぱりわからず、読み終わったあともどこにたどり着いたのか未明なものもある。結構、読みづらいものもある。
.
ただ、両氏がこのテーマで選ぶ作品郡が、読み甲斐があり、おもしろいのは間違いない。
.
作品の間には、「競訳余話」と称し、訳者2人の対談が載っていて、どんなふうに原文を読み、解き、気に入って今回その作品を訳したのかが語られている。ああ、なるほど、あれはそんなふうに解釈できるのかと膝を打つこともあり。また、なんだ、訳した人も、面白いけどよくわかんねぇなこれ、って思ってるんだなと難文を読むのに、苦戦した自分を安堵することもあり。
.
巻末には、それぞれの作品が好きだった人が次に読むのにオススメの作家や書籍が紹介されていて、2度美味しい。
.
ぜひ、多くの情報をいれずに、振り回されながら、読んでほしいです。Garamondを飲みながら、あれ?これ何の話だっけ?と、ページを行ったり来たりする時間は、本当に楽しいですよ。
.
ビールとともに、自信を持って、オススメします。
.
.
.
Selected by 久保元気(Genki Kubo)|butter デザイナー
butterは、ぐるぐる回っているうちに、何だか溶け合って、最後はお腹がいっぱいになる、そんな体験を作るお手伝いをするデザインプロジェクトです。食べるものや飲むもの、植物などを中心に、単一的でなく、ブランディングから、パッケージ、グラフィックデザイン、スチール撮影などをトータルで提案し、沢山の人を巻き込みたいなと考えています。
.
ALE & BOOKS 「ビールと読書」とは:
ビールを飲みながらどんな本を読みたいか、いわばビールとフードのペアリングならぬ、ビールと本のペアリングをお伝えできたら面白いのではないか、という提案です。奈良醸造がビールと一緒に読みたい本を紹介したり、どんな本を好きなのか、気になる方々のオススメなどを紹介していきます。
.
このあとも様々な方から選書いただきます。どうぞお楽しみに!
.
他の選書を見る