2025年、奈良醸造のブルワーたちが手がけるIPAシリーズ。ヘッドブルワー・浪岡がレシピを書いた「DOT」、ブルワー・小川の「LINE」、ブルワー・金子の「FACE」と続き、ブルワー・佐久間の「POCKET」で最終章を迎えました。個性の異なるそれぞれのビールに、デザインという形で併走いただいたデザイナー・久保元気さんに、そのデザインについて話を伺いました。そのラベルに込められたある連続性についても、お話しています。
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ホップの香りの華やかさが特徴のIPAは、クラフトビールの花形です。
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頻繁に醸造を重ねる醸造所も多く、ともすれば、個性が似たように固定されてしまうのが難しいところ。奈良醸造では、毎年どんなふうにIPAをたのしんでもらうのがいいか悩みます。2025年の今年は、いま醸造所でビールを作っている4人のブルワーがそれぞれのレシピを練り、IPAをつくるというチャレンジを行いました。
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個性が限定されがちと言う話に反して、リリースされた4つのIPAはどれも一癖も二癖もあるものになりました。
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醸造長の浪岡さんのつくったDOT (ドット)は、ジューシーでアルコール度数以上に飲みごたえのあるIPAに。次に勤務歴の長い小川さんのレシピLINE(ライン)は、小麦の入ったスムースな飲み心地で杯を重ねやすいWheat IPAに。金子くんが考えたFACE(フェイス)は、3.0%の低アルコールIPAはアルコール度数が低いながら飲み応えを重視したしっかりしたものに。逆に、佐久間くんのBrut IPA、POCKET(ポケット)はしっかりした度数ながらドライで清涼感と飲み応えを両立したものになりました。
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さて、ご察しの方も多かったのですが連続したこのIPAの名前は点(一次元)、線(二次元)、面(三次元)…といった風にリリースの展開に重ねて、次元が広がっていくようなネーミングになっており、四次元ではポケットにオチた次第です。
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デザイン上では実は、DOTでは点をモチーフにした1色モノトーンであったのが、LINE(線)で赤と青の2つの色のデュオトーン、FACEでは光の3原色RGBモチーフに面を描き、POCKETではさらに色が飛び出すべくラベルの資材をキラキラとしたもの選び、多色を用いて表現しました。こちらも勘のイイ方はお気づきになられていたかもしれませんね。
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年のはじめにDOTのモノクロで重いデザインを描いた際には、「元気さん、精神状態が大丈夫かなと思ってました…」と心配されましたが(本当に!びっくりした!)、メンバーが増えて多種多様に奈良醸造のビールづくりが広がっていったことをどんどんリリースされていく時間軸にあわせて描きたいなと思い、そのひとつめには、どうしてもモノクロな印象のデザインを作る必要がありました。苦笑
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花形と言った通り人気もあるので、たくさんの量を仕込むのがIPAの常でもあり、その上で鮮度が求められるため美味しく飲める時間も短い。
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そのため、この4つのビールを飲み比べることはできませんが、ケグ(樽)では、LINE、FACE、POCKETの3つが。缶でならばFACEとPOCKETの2つが引き続き販売中です。それぞれの個性の差を飲み比べるのも面白いと思います。
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ブルワー達にとってはなかなかプレッシャーな試みだったと思います。どれも美味しくできましたので、ぜひご賞味ください。
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