2025年9月15日(月)より、新たなラベルで登場した750ml瓶「INTEGRAL」。奈良醸造の瓶内二次発酵ボトル“N BOTTLE CONDITIONED”シリーズの定番品です。また同時に、この「INTEGRAL」のレシピをベースに瓶詰時に異なる酵母(ブレタノマイセス)を入れることで異なる味わいに仕上げた「INTEGRAL B」が販売されます。このふたつのラベルデザインを担当した久保元気さんに、デザインに込めた想いを伺いました。
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奈良醸造の定番セゾンビールINTEGRALは、750mlの大きな瓶でしか販売されていません。これは、ボトルコンディション(瓶内二次発酵)によるベルギーのオーセンティックなセゾンビールの味わいを大切にしているためです。2025年、代表作ともいうべきこのビールのデザインを刷新しました。
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もともとビールが好きになったきっかけが、ベルギービール。それが大きかったこともあり、私も、奈良醸造のビールの中でもINTEGRALは1、2を争うお気にいりのビール。オーセンティックさと自分たちのビール観のベースということを表現するべく、三角形と四角形の単純な組み合わせだけの、もっとも「描画の基礎」としてデザインしています。奈良醸造のウェブサイトをご覧になったことがある方は、INTEGRALがリリースされる前からずっと同じデザインが一番初めに表示され、今もそれが続いていることをご存知かもしれません。それくらい、奈良醸造という会社の基礎のデザインとして捉えています。
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憧れや親しみもあり、2024年、ベルギーへ旅にでました。
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たくさんの、もう行けるだけ行ける醸造所を訪ね、杯を重ね、デザインに触れました。そしてとても楽しい旅の中で、今回のINTEGRALのリニューアルデザインのヒントを得ました。
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ベルギーでは、ベルギーで作られたビールの流通のほとんどは、ボトルに詰められたビールが締めています。樽での流通や缶での流通ももちろんあるけれど、もう圧倒的に瓶が多い。瓶でしか飲めないビールは、その8割を超えるでしょう。これは、ベルギー文化的な背景が大きな理由としてあります。
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ベルギー、もといヨーロッパの水は硬度がとても高く、そのまま飲料するとなかなかしんどい水が多い。ましてや、水源が豊富でないエリアでは、汲み上げられる湖や川の水質はかなり厳しい場所があります。ベルギービールというと、歴史的に教会で作られたものも多く、いまも修道士たちによってビールの醸造がされている醸造所も少なくありません。これは、飲みづらい水の性質を調整し、発酵により保存が効くビールにすることで広くあまねく飲みやすくし、それを教会が人々に施してきた背景があることが伺いしれます。
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そんな理由もあり、パブのようなカルチャーよりも先に、瓶やおそらく古くは陶器などにつめることで手に取りやすく、どんな場所でも飲みやすい環境が整えられてきました。
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ベルギーを旅して面白かったのは、どこの醸造所でもビールを醸造する設備の案内とともに、必ず瓶の洗浄機と瓶詰め機を案内してくれること。他の多くの国の多くの醸造所を訪ねても、大きな醸造設備を見せてくれ説明してくれることはあれども、瓶の洗浄機の案内と詳しい説明をしてくれることはほぼありません。
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なぜかというと、ベルギーではビールを詰める瓶を国が基本的に数種類に指定されていて、飲み終わった瓶がリサイクルされ、また新しいビールを瓶詰めして流通させるからです。先に書いた、「水を飲めるようにするために、施されたビール」というキャラクターがこういった独自の文化を生んだわけです。一部の醸造所を除いて、ほとんどの醸造所が市場にある瓶を共有し、使いあっています。
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リサイクルをしやすいように、ベルギーの瓶ビールはラベルが剥がしやすいようになっています。悪い言い方をすれば安っぽい紙のラベル。カビがはえやすく、汚れがち、すぐボロボロと欠けます。笑
日本のラベルでは考えらないような品質なのですが、その姿はとても自然で、歴史と文化が見え隠れして腑に落ち、私は美しく感じています。
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座学でわかったつもりだったことも、触れると改めて感動があり、実感が湧きます。
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旅で得た感触を残し、今回のINTEGRALのデザインリニューアルでは、和紙とフィルムを組みあせた手触りのいいラベル資材を採用。さすがに、ベルギーの紙のラベルと全く同じにしてしまうとお店からクレームの嵐になっちゃうので、ちょっと日本風にアレンジと工夫をしていますが、ラベルの手触りでもあの感覚を残したいなと考えました。
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また多くのベルギービールのように、瓶でしか飲むことができないINTEGRALというビールの個性を感じてほしいなと思い、カクカクとラベルの形も変形させて、ラベルとボトルがシームレスに繋がるようにしました。
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リニューアルにあったって新しく加えたアイデアの全ては、INTEGRALから遠いベルギーのビール文化と歴史を感じてもらえるようにしたかったわけです。
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ぜひ、味わいだけでなく、ビールを注ぐときの手触りでも遠いビールの国を感じてもらえたら嬉しいです。奈良といっしょに、ね。

「INTEGRAL」と「INTEGRAL B」は、2025年9月15日(月)正午より業務販売をスタートします。
また9月26日(金)正午より、奈良醸造オンラインストアでも販売します。
どうぞお楽しみに。