#ビールを選ぶ楽しみを をモットーにしている奈良醸造では、ラベルデザインも一緒に楽しんで欲しいと思っています。今回は、トロピカルなホップの香りを楽しめる「SIDE BY SIDE(サイドバイサイド)」のデザインにまつわるお話。デザイナー、butter 久保元気さんのコメントをご紹介します。
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~~~SIDE BY SIDEの話~~~
パッケージ(意匠を施したもの)を考えるとき、味を説明するデザインはしない、というのが自分のしるべになっています。
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これには、2つ理由があります。人間には、視覚、聴覚、触覚、嗅覚、味覚の五感が備わっていて、それは、確かなようであいまいなもの。「味」という、嗅覚や味覚に即したものを、視覚や聴覚など他の五感に翻訳して説明するのは、なにか削ぎ落とされたり、おかしな誤解を生んだり余計なことが多いから。
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また、辛いものが苦手な人や好きな人がいるように、味覚については兎にも角にも、それぞれの感じ方が違う。こう感じてくださいという説明を絵にするのは、味をつくる人にも味わう人にも、押し付けがましい。これが1つ目の理由です。
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もう1つは、もっとシンプルで、できあがる前(ここでいう出来上がりというのは、飲む人のクチに入るまで)に、想像で味を描くというのは、とても嘘くさくなってしまうからです。デザインやグラフィックは、魔法のような手品や美しく仕立てる化粧のような面白さの技術なので、嘘を塗り込み放題。でも嘘は、ほんのひとつまみになるべくしたい。
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味の代わりに、大切になるのはなにか?それは、作った人やブランド、モノの哲学です。
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どういう苦労や工程踏んで開発されたか?どんな人が作ったのか?どういう状況や、心境のときに楽しんでほしいか?誰に飲んでほしいか?なぜ作られたか?または、商品のネーミングなど。
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一見、哲学は、同じようにあいまいなもののようだけど、そちらの方が不確かさがグッと少ない。
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SIDE BY SIDE (サイドバイサイド)は、そばにいる、とか、隣り合って、みたいな意味。飲む人のテーブルやライフスタイルに寄り添うようなビールづくりがされました。なので、支えあい、側に立つ絵にしようと思いました。
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ただし側にいるのは、ちょっと思っているのと違うやつらにしました。僕は、ひとつまみの嘘の使い道は、ここだと思うのです。
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デザインから見える世界を私たちもいつも楽しみにしています。気温がぐっと上がって春らしくなってきたこの頃。トロピカルでジューシーな柑橘を想起させる味わいのSIDE BY SIDE、お花見のお供にもおすすめです🌸