先日リリースした2023年バージョンのQUO VADIS(クオヴァディス)。おかげさまで好評をいただき、ホッとしているところです。
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そもそもQUO VADISってどんなビールなの?と素朴な疑問をお持ちの方もいらっしゃることでしょう。ここでこのビールについて振り返ってみたいと思います。奈良醸造が毎年造っているQUO VADIS。ファーストのQUO VADISをご存知の方は、奈良醸造歴が長い!と胸を張っていただいてもいいかもしれません。
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初めてこのビールがリリースされたのは2019年12月のこと。このときから、奈良醸造の1年を飾るラストリリースのビールはQUO VADISとなりました。もともとの発想は、白ブドウの香りや味わいのあるホップを使った麦汁をワイン酵母で発酵させたらどうなるのだろう?という純粋な実験精神からのスタートでした。
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この当時のQUO VADIS、アルコール度数は4.7%。ブドウの香りもさることながら、白桃を思わせる香りも重なり、甘めの仕上がり。このファーストを懐かしがる方もいらっしゃいます。また、このときはまだ缶はなく、ビアバーやレストランのための樽のみでのご提供でした。
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2年目となる2020年はよりソリッドに、冬の季節に飲むシャンパンをイメージしたビールにリニューアルしました。アルコール度数はファーストより高めの7.0%。モルトやホップの構成はそのままに、仕込み方法を見直してドライなビールとして仕上げたこの年のQUO VADISが、今の形のベースになっています。
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3年目の2021年。この年から350ml缶ビールの製造が始まり、より手に取りやすくなりました。このときに初めてこのビールを知った方も多いのではないでしょうか?この年、シトラホップを新たに追加して、より華やかなブドウ感を表現することに成功しました。IPAに多用されるシトラホップ、名前の通りシトラス(柑橘)の香りが爽やかなホップですが、ある特定の条件下で白ブドウの香りがすることに気が付き、このホップを取り込むことにしました。
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4年目となる昨年の2022年。この前年からソーヴィニヨン・ブランという白ぶどうをフリーズドライにした粉末、Phantazmと呼ばれる製品が海外でIPAに使われ始めました。このPhantazm、ホップと同じ香りの成分が(しかも高濃度で!)含まれていることから新たな原材料として注目を集めはじめたところでした。ただ、当時日本では手に入らないということから、国内でワインの絞り粕をフリーズドライにされている商品があることを知ってこちらを導入。ブドウの果汁ではなく、果皮由来の香味をビールに乗せることでQUO VADISの味わいに新たな奥行きを与えることができました。
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そして今年2024年。QUO VADISも5年目を迎えました。今年は新たにオークチップを取り入れました。ワイン醸造においてはオーク樽由来の樽香や、木質から溶出するタンニンなどのポリフェノールが、ワインの味わいに深みをもたらします。これをビールでもできないかと考え、今回オークチップを使用することでこのニュアンスを出してみることにしました。
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こうして通時的に俯瞰をすると様々な取り組みをその時々でこのビールに込めてきたことが見て取れます。
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¿Quo Vadis?
ラテン語で「どこへ行くのか?」。
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この言葉は、僕たち自身に向けた問いかけでもあり、そしてクラフトビールそのものに向けた問いかけでもあります。そして、出来上がったビールは、その時々での僕たちの答え。毎年苦心惨憺してバリエーションに変化をつけていると思ったら大間違い。色々な知見のうち、どれを採用してどれを削ぎ落とすのか、毎年そこに悩んでいます。そして、実はもう来年はこういう要素を入れたい、というアイデアがすでに湧き上がってきています。こういったアイデアの種を1年掛けて育てていきたいと考えています。
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最後に。
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奈良醸造ではビールのリリースのたびにそのビールのデザインをポストカードとして、手にとっていただけるようにしています。デザインに目が行きがちなポストカードですが、よく見てください。英語表記の部分がラテン語になっています。なんと書いてあるかは、ナイショ。みなさんの冬休みの宿題です。それではメリークリスマス!