シャルドネ果汁と麦汁をブレンドし、ワイン酵母で醸したグレープエール、「QUO VADIS(クオ ヴァディス)」。このビールでは、ワインとビール、それぞれの技法を掛け合わせカテゴリーを超えた味わいに挑戦しています。
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「QUO VADIS」は毎年1年の終わりに醸造しているビール。ソーヴィニヨンブランのような白ワインの香りがするホップと麦汁をワイン酵母で醸していることが特徴ですが、さらに毎年特別なアレンジを加えることで、その年だけの独自の味わいを生み出しています。2024年版では、ワインの伝統的な技法「アッサンブラージュ」にヒントを得て、シャルドネ果汁と麦汁をブレンドしました。
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「アッサンブラージュ」とは、ワイン好きの方ならご存知の言葉かもしれません。フランス語で「混ぜ合わせる」を意味していて、複数のワイン原酒を組み合わせ、個性豊かな味わいを生み出す伝統的な技法です。一見シンプルに思えるこの技法ですが、実際には緻密な計算と経験が必要となります。ブドウ品種の選定から配合比率まで、わずかな違いが味わい、香り、外観に大きな影響を与えるためです。1つのブドウ品種の特徴だけが残ってしまったり、特徴を消し合ってしまったりすることも。各生産者の試行錯誤と探求の歴史が、複雑な香りと味わいを持つワインを生み出し、飲み手の楽しみを広げてきました。実はこの技法は他の醸造酒にも広がっています。例えば、異なる特徴を持つ複数の原酒をブレンドして調合した日本酒が存在していたり、ビールにおいても、ベルギーでは複数の醸造所で造られたランビックをブレンドするブレンダーがいたり。
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今回の「QUO VADIS」では、このアッサンブラージュの技法にヒントを得て、醸造酒の垣根を超えて、ブドウ果汁と麦汁をブレンド。ブドウ果汁には、酸味と甘さのバランスがよく、フレッシュな香りのあるシャルドネ果汁を選択。その特徴を際立たせられるように、麦汁の元となる麦芽はピルスナーモルト100%と敢えてシンプルな構成にしています。異なる特徴のお酒を「混ぜる」という発想は今回に始まったことではありません。2024年2月の箕面ビールとのコラボレーション「From Dusk」では、お互いのビールをブレンドし新しいビールを生み出しましたが、今回は発酵前のシャルドネ果汁と麦汁をブレンドする、というチャレンジをしました。
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グラスに注ぐと、白ワインを思わせるシャルドネの瑞々しい果実の香り。スパークリングワインを思わせる繊細な炭酸と、そして余韻としてかすかに残る苦みはビールならではの特徴。ワインとビール、それぞれの特徴を調和させた一杯です。普段はビールが苦手という方にもぜひ味わっていただきたい醸造酒です。
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そんな「QUO VADIS」ビールとワインの特徴を兼ね備えているので、色々なフードとのペアリングが楽しめます。先日のイベントでは、チョコレートのペアリングが人気でした。ぜひ皆さんも、おすすめのペアリングがあれば教えてください。
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ちなみに「QUO VADIS」とは、ラテン語で「どこへ行くのか?」の意。毎年、醸造酒のこの先を占う思いを込めて醸造しています。ビールとワイン、それぞれの醸造酒の面白さをこの一杯の中に探してみてください。