「#ビールを選ぶ楽しみを」をモットーにしている奈良醸造では、ラベルデザインも一緒に楽しんで欲しいと思っています。今回は、コールドIPA「DEEP BREATH」のデザインの話。DEEP BREATHは、イラストレーターの三嶋さつきさんによるイラストレーションを使ったコラボレーションラベル。いつも奈良醸造のデザインをしているbutter久保元気さんに、三嶋さんと奈良醸造のコラボレーションを120%楽しめるようにと、ディレクションをお願いしました。奈良醸造のスタッフが三嶋さんと久保さんにDEEP BREATHの制作秘話ををお伺いした、その様子をお届けします。
ーーできあがった「DEEP BREATH」を手に取ってみて、どうでしたか?
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三嶋さつき(以下、三嶋)「送っていただいた段ボールを開けてパッケージを見て、とっても感動しました。もともとクラフトビールが好きで飲んでいたからこそ、自分の絵がパッケージになっていることに嬉しい気持ちでいっぱいで。
飲んでみた感想としては、すっきりとした爽やかなIPAだという印象。ちょうど届いた時期が台風などでじめっとした時期だったんですけど、そういう時期にこそ爽やかに飲めそうな味だと感じました!
私はIPAがとても好きなんですが、友人と話していると人によっては苦みを強く感じて苦手な人もいるみたいです。でもこのコールドIPAという種類はすっきりとしたクリアな味わいなので、そんな人にも飲んでみて欲しいなと思いました」
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butter 久保 元気(以下 久保)「三嶋さんのデザインがビールとなって日常のテーブルに並んでいたら素敵だな、という純粋な想いがあったので、それが形になって良かったです。今回、その実現したかった絵を実際に写真にも収めたくて、DEEP BREATHの缶がテーブルに並ぶ様子を撮影させていただきました。
この写真は京都のゲストハウス&カフェバーラウンジ Len で撮影しています。もともと、三嶋さんの個展がLenで催されているときに作品を拝見して、あぁ、とても素敵な世界観を作られる方だなーと思ったこともあり、そこで撮影させてもらえたのも嬉しかったです」
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ーー今回は缶のイラストだけでなく、文字や奈良醸造のロゴまで三嶋さんに描いていただきました!その経緯や工夫した点などがあれば教えてください。
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久保「三嶋さんのイラストレーションがすごく好きなんですが、同じように三嶋さんの書く文字のファンでもあって。ダメ元で、文字の部分もふくめて全部を三嶋さんが描くという無茶なお願いをさせていただきました。
その過程で、描いていただいたイラストレーションを全面に大きくいれるデザインも候補にありました。それも手応えのあるいいデザインだったのですが、三嶋さんが普段からカレーやラーメンなどテーブルの様子を描かれることもあって『奈良醸造の缶がテーブルにあってそれを三嶋さんが描いた』ような感じにできないかなと。
そのほうが、ただイラストをお願いするよりもより奈良醸造と三嶋さんの魅力が膨らむのではないかとディレクションさせていただきました。…すみません、大変でしたよね」
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三嶋「ぜんぜん!大変ではありましたけど(笑)、楽しかったです!細かい字まで全部書かせていただけましたよね。最終的なデザインは久保さんにやっていただいたのですが、全体的にクラフト感というか手作り感があるようなラベルになるように工夫して頂けて有難いなと思いました」
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久保「実はイラストの範囲が他の缶ラベルよりもちょっとだけ広いんです。いつもよりおおらかで、優しい印象に見えるようにしたので、それが手に取った方にも伝わっているといいな」
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ーー三嶋さんには「DEEP BREATH」という名前も一緒に考えていただきましたよね。
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三嶋「はい。奈良醸造のみなさんと一緒に考えさせていただいて、いくつかあったワードのなかから決定しました。『DEEP BREATH=深呼吸』は、結構私自身が今まで過去の展示とかでも『息をすって、はく』みたいな、すごくシンプルな行為ですが、大切にしたいワードでした。深呼吸はもちろん生きていくうえで必要な行動なんですけど、日頃から私は、『自分が感覚的に深呼吸すること』を大切だなと思っていて。息をすることで空気の匂いを嗅ぐ、みたいなこともすごく好きなんです。今の時期なら特に湿気が多くて匂いを濃く感じますよね。そういった、いつもの自分の制作活動にも繋がっているような言葉がビールの名前にもなって、とても嬉しいです」
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ーーラベルに描かれている穏やかな山のイラストも、この名前の雰囲気とマッチしていますよね。
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三嶋「普段海や山に行くことが好きで、そういう場所に行くと深呼吸ができる気がするんです。山とか海とか、自然の豊かな場所にいって深呼吸しながらビールが飲めたら最高だなということをイメージしながら書きました。私は和歌山県出身で、地元には海も山もあるんですが、どちらかというと山寄りの地域だったので山の方がしっくりきました。月が出ているんですけど、時間帯は特に想定していなくて、夜の月にも昼の月にも見えたらいいな、と思っています」
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ーー奈良も山に囲まれているので、山を見るとなんだかほっとします。三嶋さんといえば、他の作品も含めて、ピンクの色が印象的なイメージがあります。この色は意識的に選ばれているんでしょうか?
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三嶋「そうですね。ピンクや赤は昔から好きな色で、作品にも多く使っている色です。でも幼い頃は、ピンクと赤=可愛いというイメージが自分の中で強すぎて、逆にちょっと身につけるのが恥ずかしい部分もありました。大人になって、自分にとってコンプレックスのあるピンクや赤と向き合うことを始めてみたら、やっぱり好きな色合わせなので、描いてみて楽しかったんです」
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三嶋「一方で、ピンクをかわいい色だなと感じているけれど、かわいい色で終わらせたくないな、という自分もいて。かわいいという言葉がものすごく便利になりすぎて、私もよくかわいいって言っちゃうんですけど、作品ではもっとチャーミングさとか、多層的な部分も見せられていたらいいなと感じています」
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久保「三嶋さんの作品で使うピンクって、色んな人がピンクと聞いて想像する、ど真ん中のピンクだと思うんです。ピンクは難しい色で、僕自身はそのまま使うことはほとんどなくて。ピンクは、これまでの奈良醸造のビールのデザインでも少しくすませたり、オレンジに寄せたり、少し外したピンクしか使ってないんですよ。三嶋さんのピンクは、いわゆるど真ん中のピンクではあるけれども、いろんな情感みたいなものがみえて素敵だなと思います。自分ではトライすることができないと思っていた色なので、今回はとても新鮮に思っています」
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ーー赤やピンクはともすれば幼いかわいさのイメージもありますが、三嶋さんの作品になるとまた違った味わいを感じます。今改めて見るとこの色ってすごく元気になる色ですよね。
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三嶋「自分も書いていて気持ちが明るくなる色だと思っているので、この缶を手に取ってそう思ってくれるといいな、と思います」
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久保「三嶋さんのフィルターを通すことで、ピンク色が、ステレオタイプな女の子っぽいさとか、かわいいに留まらない、もっと豊かな表現になっているのが良いですよね」
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ーーありがとうございました。今回お話を聞いたことで、より「DEEP BREATH」というタイトルと、このピンクの色合いやデザインに三嶋さんらしさを感じられて、改めてコラボレーションができて良かったなと感じました。
「DEEP BREATH」は現在、全国の酒屋・料飲店・奈良醸造のオンラインストアで販売中です。
また、2024年6月1日(土)~14日(金)まで、大阪のルクアイーレ 4F ニュースタアギャラリーにて、三嶋さつきさんの個展が開催中です。ぜひこちらもチェックしてみてください。
https://www.instagram.com/meetsnewstaa_osaka/
三嶋さつき(みしま・さつき)さん https://www.satsukim.com/
1992年5月生まれ 和歌山県出身 鎌倉市在住
2018年 愛知県立芸術大学デザイン専攻卒業
雑誌の挿絵、商品パッケージ、CDジャケットなどにイラストレーションを提供するほか、作品の展示発表も行なっている。現在、元保護犬だった森(もり)といっしょに、鎌倉と和歌山の二拠点で活動している。