ALE & BOOKS 「ビールと読書」
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今回は、作家・依田温さん
に寄稿いただきました。
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クラフトビール漫画『琥珀の夢で酔いましょう』の作画担当をしております、依田温と申します。
私がご紹介させていただくのは、松田青子さん著『おばちゃんたちのいるところ』です。
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歌舞伎や落語の怪談をモチーフとした短篇集で、さまざまな幽霊や人ならざるものが現代社会に登場します。
社会のしがらみに囚われ、怨恨を抱えて死んでいった幽霊たちが、現代社会に降り立つ……と言ってもおどろおどろしい雰囲気は全くなく、それぞれ新しい日常を前向きに送っています。
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自分の骨を見つけてくれた人と一緒に暮らしたり、子育てスキルを活かしてシングルマザーの手助けをしたり、慣習で頭髪を剃られて死んだけど案外似合っていたのでパンクファッションを楽しんだり…
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あらゆる呪縛から解き放たれた彼女たちの、なんと自由なことか!
死者と生者の境界を曖昧にしたフラットな世界は、なんともヘンテコで楽しそうで愛おしくて羨ましい。
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社会という枠組みの中で暮らしていると、どうしようもなく明日が不安になることがありますが、自由な幽霊たちを見ているとこちらの足取りもちょっぴり軽くなるのです。
読んでいくうちに、各話に繋がりがあることに気づくのも楽しいポイント。
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型にはまらない幽霊たちの姿は、多種多様なクラフトビールのあり方にも通ずるところがある気がしています。
『BODONI』を飲みながら本を読む。そのひとときだけでも、あなたが何からも解放されて自由を楽しめるといいなと思います。
『おばちゃんたちのいるところ』
著者:松田青子
出版:中央公論新書
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依田温(Nodoka Yoda)
作家。クラフトビール漫画『琥珀の夢で酔いましょう』作画担当。
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『琥珀の夢で酔いましょう』(マッグガーデン刊・現在5巻まで発売中)
京都を舞台に、クラフトビールをめぐる大人の青春群像劇です。
https://magcomi.com/episode/10834108156766453493
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ALE & BOOKS 「ビールと読書」とは:
ビールを飲みながらどんな本を読みたいか、いわばビールとフードのペアリングならぬ、ビールと本のペアリングをお伝えできたら面白いのではないか、という提案です。奈良醸造がビールと一緒に読みたい本を紹介したり、どんな本を好きなのか、気になる方々のオススメなどを紹介していきます。