奈良醸造が醸造を開始してから3周年。
3周年を記念してリリースするビール「STAIRS」の日本語訳は「階段」。今後ものぼり続けて行ってくれ!という思いで、奈良醸造ファンを代表し、奈良醸造の代表兼ヘッドブルワーの浪岡安則さん(写真右)と共同創業者・セールスマネージャーである谷垣幸太さん(写真左)にお話を伺いました。
(interviewer・金子ゆか)
「自分でやる」の決意と醸造開始までの1年間 ―step1― (~2018.6)
―――会社設立前のお二人について教えてください。
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浪岡「『奈良で、自分のビールを造る』と決断し、ビール醸造の世界へ飛び込んだのは2015年10月です。それ以前は同じ奈良で公務員をしていましたが、その年に醸造をスタートした京都の京都醸造へ入社しました。当時は、奈良県内では日本酒の酒蔵はあれどもビールの醸造所は一箇所。“クラフトビール”よりも“地ビール”の方が聞きなじみのある言葉でした。その頃から、奈良でももっと気軽に様々な味わいのビールが楽しめるといいなと思っていたんです。」
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谷垣「僕たちの出会いはそんな面白い話ではないのですが……。2014年にはビール好きの仲間として京都で出会っていました。確か浪岡さんが京都醸造で働いているときに一緒にやろうと誘われて。それもお酒の席でしたよね。一緒にやると決めてからも、醸造がスタートする直前まで以前の仕事を続けていました。」
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―――浪岡さんは京都醸造でビール造りを学んだんですね。どのようなタイミングで卒業したのですか?
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浪岡「京都醸造でアシスタントブルワーとして働く中で、自分でどんなビールを造っていきたいかなどをずっと考えていました。そんな理想のビール造りができる規模に合う物件と巡り会うのはなかなか困難だったんです。ついに現在の物件を見つけて契約したのが2017年7月でした。同時に京都醸造の卒業、奈良醸造の設立に至ります。」
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谷垣「とはいえ、ビールを造るための免許もないどころか、工場内にはまだ設備も入っていないし、そのための資金調達もしなくちゃいけない。そんな状態で営業活動もしないといけない。本格的な醸造のスタートは設立から約1年かかりました。」
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―――会社設立後しばらくはビールが造れない期間だったのですね。その期間中で印象に残っている出来事はありますか?
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浪岡「自由にビールを造るには、ビールと発泡酒の両方の製造免許を得た方がいいと思ったのですが、これがなかなか時間がかかりました。驚いたことに、奈良県内でビールの製造免許交付の前例がおよそ20年前だと。税務署でも慎重に交付まで審査いただいた印象です。加えて醸造設備の納品が中国で春節(旧正月)の長期休暇を挟んで、順調に進まないこともあったり……。免許の交付は2018年6月21日。奈良税務署で交付式まで開いてもらい、晴れてビールが造れるようになりました。嬉しかったので鹿に免許状を見せたら、食べられそうになったのは今でも笑い話にしています。」
第2回に続きます。