コラボレーションにあたって、まずはお互いがどのようにお酒を造っているのか情報交換をするところから始めました。その話題は、原材料からはじまり、その使い方、糖度、比重、pH、温度といった数値パラメータの考え方・向き合い方など多岐に渡ります。
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そこで分かったことは、お酒を造るというゴールは同じでも、その過程にはそれぞれのお酒が生まれた文化的・風土的背景の違いがあること。そして、過程は違っても、どちらも理論でお酒造りに向き合っているということでした。双方のロジックを突き詰めていくと、チャレンジの余地がどこに残されているのかが浮き彫りになります。その余地こそが、お互いのお酒では未踏の地。ここをコラボレーションで実現しようとしました。
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フォーカスしたのは、原材料。
ビールの主な原材料は麦芽・ホップ・水・酵母です。一方、日本酒、なかでも純米酒の原材料は、米・米麹・水・酵母となります。共通するものは、水と酵母。当たり前のようでよく見落とされることですが、どちらも構成要素の大部分は水から成り立っています。
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酵母だけでなく、お酒の基調となる水からアプローチをしてこそコラボレーションではないか。そんな発想から『油長酒造の仕込水を、奈良醸造まで運んできて使う』という大胆なアイデアが出てきました。
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油長酒造では、酒蔵の敷地内で汲み上げられる硬度200以上の超硬水が仕込水として使われています。仕込水に豊富に含まれるマグネシウムは酵母の発酵力を活性化させることから、酵母の持つ能力をフルに引き出した日本酒造りをされています。
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今回は、油長酒造の仕込水を汲み上げてタンクに入れ、トラックで奈良醸造まで運び込んでいただきました。そして、この仕込水と呼応するのが、油長酒造が保管、培養した『風の森』に使われている清酒酵母『7号系酵母』です。
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次回は、この酵母と発酵についてお話をしたいと思います。