奈良醸造では、コラボレーションという形で、生産者の方からこれまで僕たちがビールに使ったことのない素材を提供いただいたり、ブルワー(醸造家)同士がひとつのビールを作り上げるにあたって知恵を出し合ったりと、自分たちだけでは造り得ないスタイルのビールをこれまで実現してきました。
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この2月にリリースを控えているビールもそんなコラボによって実現したものになります。このビール、これまで行ってきたコラボの中でもとりわけ知恵を絞り、手間と時間をかけて出来上がったものとなり、いつにもまして思い入れの強いものになりました。
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そこで、このビールとその背景について数回にわたって紹介をしたいと思います。
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まず、今回は奈良醸造として初となる日本酒の酒蔵とのコラボとなります。お相手は奈良を代表する酒蔵のひとつ、奈良県御所市にある油長酒造。日本酒発祥の地と言われる奈良で、1719年創業と気の遠くなるような昔からお酒造りを行ってこられた、いわば大先輩にあたります。
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では、なぜ今回のコラボに至ったのか。
奈良醸造では去年の秋に大和橘を使ったビール、Philharmonyをリリースしました。これは、油長酒造が構えるクラフトジンの蒸溜所、大和蒸溜所で使われている大和橘を分けていただくことで実現したものです。
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大和蒸溜所に伺った際、「ちょうど今、風の森(註:油長酒造の日本酒銘柄)の仕込みをやっているので、見ていかれませんか?」と声をかけていただき、蔵を見学させてもらいました。そのとき、フラスコでこれから仕込みに使うために培養されている酵母を見ながらの一言。
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「この酵母を使ってビール造りしてみませんか?」
すべてはこの一言がはじまりです。
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同じお酒造りとはいえ、原材料から、仕込みの技術に至るまで全く違うアプローチ。すべての材料について、ビール造りと日本酒造りそれぞれの視点から、幾度ものディスカッションを重ね、ようやく実現に至りました。
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次回は、そんな原材料についてお話をしたいと思います。