毎年、年の瀬に一年を振り返ってしみじみとしながら書く文章も今年で6年目となりました。
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年初に掲げた2024年の目標はふたつ。
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ひとつは、創業以来これまで造ってきたビールをもう一度造ってみる、という試み。そしてもうひとつは、自分たちでイベントをやります、という宣言。
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そのいずれもが、ただ実行するだけでなく、手に触れていただいた方に喜び、そして楽しんでいただける形でお届けできたのではないかと自負しています。
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これまでに造ったビールをもう一度造るというのは、単なる焼き直しではなく、過去の自分と向き合うという作業でもありました。当時のレシピを見返すと、こうすればよかったというその当時の気持ちが蘇ると同時に、その後に知った知識をもとに、こうしたほうがより良くなるんじゃないかという新しい発想が芽生えてきたり。自分たちが数年前と違うところにいつの間にか立っていることは、こういった作業を通じて改めて知ったことも新鮮でした。
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その経験を踏まえたうえで、ドルトムンダーやラオホといったクラシカルなビールにも挑戦すると、シンプルな中に潜む伝統的の奥深さと面白さが浮き彫りになってくる。そんな発見ができたことも収穫でしたし、一方で、新しい素材にも飽くなき挑戦を続けてきました。東京にあるネパール料理のお店・OLD NEPAL とのコラボではTimmurというヒマラヤ山椒を使い、非常にローカルな素材をビールというグローバルな飲み物に落とし込む経験ができました。
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また、これまでのビールの枠からちょっと飛び出して様々な新しいことにも挑戦できた年でもありました。それは、”『ビール』という液体を造る”という行為にとどまらずに様々な形でコラボが実現したことで形となりました。
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ビールデザインのコラボでは、「ARRIVAL」で著名なインダストリアルデザイナー、シド・ミードのデザインを使わせて頂いたり、「DEEP BREATH」で三嶋さつきさんにラベルのイラストを描き下ろしていただいたり、また、HOiSUMさんとビールにちなんだソックスを作ってみたり。なぜソックス!?と思われた方もいらっしゃるかもですが、奈良は実は靴下の全国シェアが約60%と日本一の生産地だったりするのです。そんな形で奈良のことを知ってもらうきっかけづくりができるのもコラボの醍醐味。
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クラフトビールがブームと言われて久しく、醸造所の数は増加の一途を辿っています。選択肢が増えることは、飲み手としては大歓迎。そんな中で私たちのビールを選んでいただいた方々にはこの場を借りて改めて感謝を申し上げ、今年最後のご挨拶とさせていただきます。
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たくさん造った。
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たくさん飲んだ。
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たくさん笑った。
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この一年を振り返ったときの風景の中、奈良醸造のビールがどこかしらにあったとしたらこれにまさる喜びはありません。
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それではみなさん、良いお年を。
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奈良醸造 代表 兼 ヘッドブルワー・浪岡安則