ALE & BOOKS 「ビールと読書」
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「Garamon(ガラモン)」を飲みながら読みたい本を紹介するALE&BOOKSも、とうとう10冊目。今回は、昨年秋にコラボレーションビール「NOTHING SPECIAL」を造った松本ブルワリー・勝山拓海さんからの一冊です。
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『サレ・エ・ぺぺ 塩と胡椒』
著者:四方田犬彦
出版:工作舎
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長野県松本市でビールを醸造している勝山拓海です。年齢は違えど同期という切磋琢磨し合える特別な間柄の縁の元、二度目のコラボレーションビール【NOTHING SPECIAL】が想定より早く実現出来たことが嬉しいです。皆様、奈良醸造でのスコッチエール、松本ブルワリーでのアメリカンベルゴスタイル、飲まれましたでしょうか?
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さて、今回ご紹介さていただきます一冊は四方田犬彦氏著『サレ・エ・ぺぺ 塩と胡椒』になります。
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「塩分をまったく使用しない料理を作っていたときにつくづく感じたのは、自分のそれまでの食生活がいかに塩に依存していたかという事実だった」
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「塩も胡椒も用いない料理を作る。それはわれわれの食を無意識的に統括してきたイデオロギーから、自分を解き放つ契機となるのではないだろうか」
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と序文では著者の塩への依存とそこからの解放を語るのだが本書では、なぜ人々が「本物の料理」や未知の料理を求めるのか、食べることの歴史的な意味や「食べる」行為の歴史性や政治性が示唆され、単なる生理的欲求ではないことが主張されています。また料理の「真正性」へのこだわりにも批判的視点が加えられてます。
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クラフトビールへの期待や熱狂は、ある意味で食・料理への「本物志向」の一種とみなしてもいいのかもしれません。商品性よりも作り手の個性や技術、地域性を重視する点で、両者は通底していると思います。しかし、そうした「本物志向」は時として批判的なまなざしを向けられもします。大衆消費文化へのアンチテーゼとしての側面をクラフトビールが持つように。著者が提起する「真正性」への疑問は、クラフトビールにも当てはまるのかもしれません。
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本書には「執筆で忙しいときに作る、ものすごく簡単な料理一覧」というちょっとした簡単レシピも収録されています。ビール片手に食哲学なエッセイ、収録されているレシピとビールのペアリングを楽しむにはいいのかもしれません。
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Selected by 勝山 拓海(Takumi Katsuyama)| ヘッドブルワー
長野県松本市にある松本ブルワリーの醸造責任者。実はALE&BOOKSに登場するのは2回目。
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ALE & BOOKS 「ビールと読書」とは:
ビールを飲みながらどんな本を読みたいか、いわばビールとフードのペアリングならぬ、ビールと本のペアリングをお伝えできたら面白いのではないか、という提案です。奈良醸造がビールと一緒に読みたい本を紹介したり、どんな本を好きなのか、気になる方々のオススメなどを紹介していきます。
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「Garamond」でのALE&BOOKSは今回が最後です。いかがでしたでしょうか?みなさんもぜひ、お気に入りのペアリングを見つけたら、教えてください!
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