ALE & BOOKS & CIDER ー ビールと本のペアリング
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今回は、奈良醸造とポニーキャニオンが共同で開催する企画『会う、飲む、笑う、』( @anw.narabrewingco )の共同プロデューサー・酒井さんの選書です。
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『地球と書いて〈ほし〉って読むな』
著者:上坂あゆ美
出版:文藝春秋
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幼いころからずっと愛や夢を歌うロックバンドやカリスマに憧れていました。漫画や映画や小説など、物語の主人公に自分を重ねたことも数多く、いつも〈特別な誰か〉に憧れていたように思います。
大人になって、いつからか〈特別な誰か〉のものに限らず〈人〉に焦点をあてたドキュメンタリーテイストの作品に惹かれるようになりました。生い立ちや自身の哲学、葛藤等を赤裸々にリリックに落とし込んだHIP HOPの音楽や、人生が全乗っかりしている芸人さんのラジオ番組たち。ここ数年ではどこの誰かもわからない “誰か” が思い思いに話をするPodcastも好んで聴くようになりました。
読書を旅に例える方もいますが、自分は人との会話にも同じようなことを思うことがあります。そこにお酒を伴うことも少なくありません。かつては自分と共感してほしくて “同じ” 想いを持っているであろう相手を求めていましたが、次第に “違う” 想いの人と対話をすることの面白さにも気づき始めました。自分と違う個体である相手の話を聴きながら違う人生に思いを馳せたり、勝手に追体験するようなことが自分の世界や視野を拡げてくれることが多々ありますし、違うことに目を向け始めてから相手の特長や魅力に気づくチャンネルが開いたような気もしています。
今回紹介する本は、そんな自分が強く惹かれた作品です。上坂さんの歌集『老人ホームで死ぬほどモテたい』も読んでいたのですが、一首一首が上坂あゆ美さんという人間の断片のように感じ、それらが集まることで上坂さんという人間の輪郭をうすぼんやりと捉えられるような初めて体験する種類の読後感を味わいました。
本書はその歌集から抜粋されたいくつかの短歌とその短歌に至る上坂さんの実際のエピソードが対になった形で記されたエッセイで、それらをセットで読むことで、まるで初対面の人と会話をしながら相手のことを少しずつ知っていくような、もしくは生い立ちを切れ味鋭いリリックで歌うHIP HOPの楽曲を聴いているような感覚を覚えました。
奈良醸造のビールを呑みながらこの本を読むとき、よければぜひいろんな精神状態のときに読んでみてほしいですね。きっと自分も今後そうすると思います。
もちろん今の時点で好きなエピソードもありますが、もし気落ちしたタイミングで読んだらきっと今とは違うエピソードにくらうことも容易に想像できますし、季節や体調によってもきっと違うはず。上坂さんが抱いた名前のない感情のレパートリーがエピソードとなって集約されているような本書は、だからこそその日の自分の状態によって、上坂さんの感情のグラデーションと自分のチャンネルが合うポイントが異なってくるような気がするんです。
きっとこれからも何度も生活の中で手に取る一冊です。
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Selected by 酒井慎司(Shinji Sakai)| 『会う、飲む、笑う、』共同プロデューサー
株式会社ポニーキャニオンのプロデューサー。最近ハマっていることはPodcastを聴くこと。
オススメの番組は『BAD PHARMACY』『上坂あゆ美の「私より先に丁寧に暮らすな」』『原宿の今じゃない企画室』『本の惑星』『みなみかわと大島育宙の炎上喫煙所』など(書き出したらキリがなくなるので‥)。
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ALE & BOOKS 「ビールと読書」とは:
ビールを飲みながらどんな本を読みたいか、いわばビールとフードのペアリングならぬ、ビールと本のペアリングをお伝えできたら面白いのではないか、という提案です。奈良醸造がビールと一緒に読みたい本を紹介したり、どんな本を好きなのか、気になる方々のオススメなどを紹介していきます。
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