ALE & BOOKS & CIDER ー ビールと本のペアリング
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読書に合うビールを提案する「ALE&BOOKS&CIDER」企画。奈良醸造の新作「BIFUR(ビフュール)」を飲みながら読みたい本を様々な方にを選書いただきました。今回は、奈良醸造のアシスタントブルワーの金子の選書です。ぜひみなさんも、「#のみものとよみもの」のハッシュタグで、ビールに合う本を教えてください!
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『私とは何か 「個人」から「分人」へ』
著者:平野啓一郎
出版:講談社
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ビールを飲みながら読み進める本として何がいいかなと考えたとき、今までは「ふわふわした気分の中、感情移入しながら読む小説がいいなぁ」と思っていました。しかし最近は「自分になかった知識や考え方についての本を、少し頭の回らなくなった状態で読むのもいいなぁ」と思うようになりました。
私が今回紹介するのは、「日蝕」や「マチネの終わりに」などで有名な平野啓一郎氏が提唱する分人主義についての著書「私とは何か」。
この本では、今まで考えられていた「個人」というモデルに代わり「分人」という新しい人間のモデルが提唱されています。「分人」というモデルでは、俗にいう「たった一つの本当の自分」が様々な仮面(ペルソナ)を被って生活するという考えではなく、様々な人格全てを「本当の自分」として扱うそうです。
SNSなどの発達により、公私共に様々な他人と関わることが多い時代。分人主義は、人間関係に疲弊しがちな現代において、知っていると得するライフハック的な役割を果たしてくれるのではないだろうか。
ビールを飲みながら本を読んでいると、酔いが回って内容全てを理解し記憶することは難しいかもしれません。そんな中、「自分に少しでも刺さる部分や新たな発見があれば儲けもの」ぐらいの軽い気持ちで読書に向かってみるのも良いのかもしれません。ちなみに私は本書の中で「八方美人」に対する解釈が特に心に刺さっています。
ビールを飲みながら読書を楽しむ「自分」も大切な「自分」。お酒の力を借りて肩肘張らずに新しい知識を得る経験を是非一度楽しんでみてください。
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Selected by 金子寛(Hiroshi Kaneko)|奈良醸造
ブルワー2年目の25歳。猫とビールが何よりも大好きです。
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