ALE & BOOKS 「ビールと読書」
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奈良醸造では、ビールグラスや、いつものビールについているデザインなどをしているbutterの久保元気です。
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今年のジャーマンエール、BODONI(ボドニ)と一緒にオススメしたい一冊は、全卓樹 著『銀河の片隅で科学夜話 物理学者が語る、すばらしく不思議で美しいこの世界の小さな驚異』です。本書では、物理学者でもある作者が、科学と叙情を行き来しながら散文的にことばを紡ぎます。
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その中で科学の話をしながら、それが私達の日常や、世界、頭の中などいたるところの指標になることをしめしてくれます。科学が、人間の進歩とともに問題を抱えながらも、成長や前進を促してくれていること、そしてその美しさがよくわかります。
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例えば、寄せては返す浜辺の波をみつめながら浮かび上がった、永遠なんてものがあるのかと言う問いを、科学が示す不滅についてや、文学に記された永劫についてをいったりきたりしたり。あるいは、確率論を用いて、3人集まれば文殊の知恵、たとえ3人の中のひとりが劣っていても正しい選択がいつもできなくとも、それでも、1人で何かを決めて進めていくよりもよい結果に繋がる可能性が高いことを教えてくれます。
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こういうふうに書くと、何か難しそうな本に感じますが、実際に読んでみると、そんなことはありません。作者の文章が巧みで、科学の話を読んでいるはずなのに、どうにも詩のような美しい言葉だったり、難解に思うこともなくスルスルと読めてしまいました。
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科学の理屈と言葉の情緒にどんどん自分の感覚が広がっていくような気持ちよさもあり、鬱陶しい雨続きや、日常のちょっとした諍いなど、日々の足をすくわれそうになることも、科学を杖をとして歩けば、ずっと転びにくくなるような気さえしてきます。
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思うに科学とはきっと観察なのでしょう。だから、自分が普段仕事にしているデザインや撮影と通じる部分もあり、僕は特に気に入る本でした。一つ一つは10分もあれば読み終わる短くやさしい文章ですので、ゆったり飲めるBODONI(ボドニ)を片手に飲酒しながら軽く読めることもあり、飲みながら読むのにもいい一冊なんじゃないかと。
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今年も、本を読むのも、ビールを飲むのも、やはり楽しくてしかたがありません。
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「銀河の片隅で科学夜話 物理学者が語る、すばらしく不思議で美しいこの世界の小さな驚異」
著者/全卓樹
出版社/朝日出版社
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butter / 久保元気
butterは、ぐるぐる回っているうちに、何だか溶け合って、最後はお腹がいっぱいになる、そんな体験を作るお手伝いをするデザインプロジェクトです。食べるものや飲むもの、植物などを中心に、単一的でなく、ブランディングから、パッケージ、グラフィックデザイン、スチール撮影などをトータルで提案し、沢山の人を巻き込みたいなと考えています。
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ALE & BOOKS 「ビールと読書」とは:
ビールを飲みながらどんな本を読みたいか、いわばビールとフードのペアリングならぬ、ビールと本のペアリングをお伝えできたら面白いのではないか、という提案です。奈良醸造がビールと一緒に読みたい本を紹介したり、どんな本を好きなのか、気になる方々のオススメなどを紹介していきます。