2021年から始まった、奈良県の酒蔵・油長酒造 風の森とのコラボレーション。奈良醸造からは、日本酒・風の森を醸す清酒酵母を使用したビール「UNDERWATER(アンダーウォーター)」、油長酒造からは、麦芽を使ったビールの製造にインスパイアされた、玄米で醸された日本酒「風の森 ALPHA 8 大地の力」が発売されました。
今回は、詰めたてのふたつのお酒を、油長酒造の山本社長と風の森・醸造責任者の中川さん、奈良醸造の醸造長・浪岡が試飲したときの様子をレポートします。
まず飲んだのは、UNDERWATER。
油長酒造のお酒造りで使用する仕込み水と清酒酵母に加え、2024年は新たに“そやし水”を使用しました。そやし水とは、 乳酸発酵によって出来上がる酸性水のこと。日本酒では、そやし水を使用して酒母を育成する菩提酛という手法があり、風の森ALPHAシリーズはすべてこの方法で醸造されています。
「松茸の香り。日本酒に含まれる吟醸香に近づいている気がする。飲み口は昨年よりもドライな印象」と山本社長。
「確かに、イチゴのようなエステル香が深まって、キノコ類のような香りです。そやし水が味の深みを出して、より日本酒らしさを引き立てているのかもしれません」と中川さん。
“そやし水”を使用したことにより、より風の森で醸される日本酒のような香りに近づいているようでした。
次に、ALPHA 8 をグラスに注ぎます。そこでまず、透き通った黄金色にびっくり。並べてみると、ビールと見分けが付かないほどです。
玄米で醸されたALPHA8。日本酒に使うお米を大胆にも麦芽のように煎るという、風の森独自のAmorphous(アモルファス)製法で造られています。
「飲んだ後、口の中に残る香ばしい感覚がビールに似ている。まるでブラウンエールのような味わい」と浪岡。
焙煎したことで、カカオやカラメルのような香りが引き立っていました。ビール好きにも、ぜひ飲んでみて頂きたい一杯です。
さらに温度が上がると、フルーティな香りが立ってきます。2024年のAlpha8には、レモンを思わせる味わいの有機酸であるクエン酸を作り出す白麹が少量使用されているそう。お米の甘味やコクに加え、そやし水を使った菩提酛や白麹由来の有機酸によって、多重層化した味わいに仕上がったそうです。
日本酒の醸造法や味わいに近づいたUNDERWATERの一方で、よりビールの醸造法や味わいに近づいたALPHA8。
よりお互いが歩み寄った2024年のふたつのお酒。飲み比べることによって、それぞれのお酒が持つ可能性を感じるとともに、元から持っている個性も再認識することができるかもしません。さらに今後はどうなっていくんだろう?と、早くも今後に向けて議論が絶えません。
ぜひ、皆さんもこのふたつのお酒を飲み比べてみてください。