#ビールを選ぶ楽しみを をモットーにしている奈良醸造では、ラベルデザインも一緒に楽しんで欲しいと思っています。今回は、松本ブルワリーとコラボしたスコッチエール「NOTHING SPECIAL(ナッシングスペシャル)」のデザインにまつわるお話。デザイナーであるbutter 久保元気さんのコメントをご紹介します。
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---以下、久保元気さんより---
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奈良醸造と松本ブルワリーの、「ふつうのこと」コラボレーション、2023年もできました。うれしい。
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Nothing Special(特別じゃない。ふつうのこと)と名付けられたこのコラボレーション。コラボレーションといえば、新しいアイデアや、珍しい副原料など「THE・特別な」ことをすることが多いと思います。もちろん、こういったコラボレーションで新しい地平が開けて、それぞれの醸造所が一歩すすんでいったり、ステージが上がったりすることには意義があり、そういったチャレンジが、好きです。
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ただ、同時にそれぞれの醸造所どうしが一緒にビールが作るときに、きっと、もっと大切にしたいことは、ビールに対するフィロソフィーを語り合ったり、普段どういうところに気を配っていてそれをビールに落とし込んでいるか、を交換することだと思います。
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松本ブルワリーは、本当に定番ビールのbitterが美味しくて、ああ、こういう当たり前な日常に落とし込まれた美味しいビールを作るっていいな、素晴らしいなと、そこから、お互いの「普通の」ビールを交換するように、往復してやりたいなと至ったわけです。
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そんなわけで、2022年のNOTHING SPECIALでは、奈良醸造は、「松本ブルワリーの普通のビール、bitter」を。松ブルは、「奈良醸造の普通のビール、SAISON」をつくりました。
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ラベルデザインでは、「普通のことの尊さ・翻って誰かにとっての特別さ」みたいなものを表現したいなと思い、奈良醸造のラベルでは「なんでもない日常に、花を買って帰る」をテーマに「普通だけど特別」なイラストレーションを描きました。また、松本ブルワリーバージョンのラベルでは同じテーマで「イヌがいること」を描きました。どちらも、昨年に描いた中でも、すごく気に入ったラベルです。
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2023年は、2022年と同じNOTHING SPECIALというブリューイングテーマで松本ブルワリーのScotch aleを醸すことになりました。松ブルのscotch aleの魅力のあれこれはここではしませんが、とても当たり前な、毎日飲みたくなるようなビール。
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今回、醸造が始まるまで、いや、はじまったときも、別のアイデアでラベルを描く予定でいました。ひとつは、レコードをかけること。あるいは、朝ごはんをしっかり作ること。あるいは、手紙を書くこと。どれも、NOTHING SPECIALなイラストレーションが描けそうで、どのアイデアもいいなぁ、と迷っていました。
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だけど、奈良にやってきた松本ブルワリーのヘッドブルワーの勝山くんと、数日をすごし、ビールを飲みながらちょっと喋り過ぎなくらいたくさんのことを話していたら、あれ?これは、これしか、この2023年の秋に描くものはないじゃんか!となり、「特別じゃないよ、でも特別」をコンセプトに全く別の絵を描くことになりました。
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そんなわけで、2022年は花を買って帰ったのが、2023年は指輪を贈るになったのでした。おめでとう。
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ひとつのビールから紡がれていくデザインのストーリー。デザインから見える世界を私たちもいつも楽しみにしています。
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ちなみに、2023年の松本ブルワリーバージョンのNOTHING SPECIALは、奈良醸造の定番ビールFUNCTIONと同じアメリカンベルゴスタイルエール。そのつながりで、2匹の猫が描かれています。なぜラベルにメガネが描かれているのか…?そのことについては、皆さんの想像におまかせします。