ALE & BOOKS 「ビールと読書」
.
6冊目は、ブックデザイナーである山田さんからの選書です。今回のビール名になっているフォント「Garamond」のことについてもお話いただいています。
.
『Documents』
著者 / Ed Fella
出版社 / Pyramyd
.
.
ブックデザイナーの山田洋一です。初めにオールド・フェイス・ローマンのガラモン(ギャラモン)のお話を少しだけ。
.
書体には作った人の名前がついてることが多いですが、調べていくと歴史とリンクして活字が旅をしていたり、職人の人生やロマンが詰まっていたりしてすごく興味深いんです。書体好きデザイナーとして仕事で欧文フォントを選ぶときは、いろいろ調べてテンションを上げたりしています。
.
今回のジャーマン・エールの名前であるガラモン書体は16世紀初頭に北イタリアかフランスに渡った活字書体をもとにクロード・ギャラモンが確立した、フランス語に適した書籍本文用活字です。この時代にはもう書籍が存在しているんですね。
.
20世紀以降現在に至るまで、ギャラモン書体は色々な国、メーカーから復刻されていますが、そのもととなる見本帳は1592年にドイツで発行されています。ジャーマンです。またもう一つ、1612年にフランスで発行された線質の柔らかいジャノン系という活字もあります。こちらの方がよりフランス的で、よりギャラモンらしい活字書体だと言われたりします。また異色の復刻書体として1913年にイギリスで発売された「プランタン」は、のちに新刻され新聞用書体「タイムズ・ニュー・ローマン」に引き継がれたりしています。名前は違えどもとをたどればギャラモンなんですね。偉大です。
.
今回僕が選んだ本はEd Fellaの『Documents』です。アメリカ人グラフィックデザイナー/アーティストのタイプフェイス作品集です。経歴も異色で、デトロイト生まれで30年間ほどコマーシャルアーティストとして活動した後、48歳でデザインの博士号をとり、美術大学の教鞭をとるようになったそうです。ポラロイドで撮影された街中のサイン、ネオンからインスパイアされたレタリングが収録されていて、一言で言うなら自由な文字たちです。本当に唯一無二というか、なんでこの線が文字になるんだろうと見るたびに思います。時々出てくるイラストレーションも素敵で、アルファベットの自由な看板たちも見ていて楽しくとても参考になります。「デザインは自由だ!」とあらめて思わせてくれる本です。
.
一見無秩序に見えるタイプフェイスですが、1993年に制作された「OutWest」はフォントとして発売されていて、あのタイポグラフィ、グラフィックデザイン誌『Emigre』のfont bookにも登場します。Ed Fellaの文字たちからギャラモンの要素を見つけるのは難しいですが、彼がもしオールド・ローマンを作ったらどんな文字になるんだろうかとふと想像してみたり、でもきっと見たことのない文字になるんだろうなあと思ってみたり。クロード・ギャラモンが現代のFellaのタイポグラフィを見たらきっと驚くと思うし、ビール(当時からあったのかしら?)の名前になったなんて知ったらびっくりするだろうなと思いながらジャーマン・エールの風味を楽しむのも良いかもしれないですね。
.
.
.
.
Selected by 山田 洋一(Yoichi Yamada)|ブックデザイナー
アートブックやヨガ雑誌『the yogis magazine』のアートディレクション等を手掛ける。
@yamaday1997 ( ちなみにEd Fellaさんのインスタはこちら。 @edwardfella )
.
ALE & BOOKS 「ビールと読書」とは:
ビールを飲みながらどんな本を読みたいか、いわばビールとフードのペアリングならぬ、ビールと本のペアリングをお伝えできたら面白いのではないか、という提案です。奈良醸造がビールと一緒に読みたい本を紹介したり、どんな本を好きなのか、気になる方々のオススメなどを紹介していきます。
.
このあとも様々な方から選書いただきます。どうぞお楽しみに!
.
他の選書を見る