※この記事は、2022年7月29日に開催された「奈良醸造オンライン採用説明会」からの書き起こし(抜粋)になります。
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安田(司会):これから、奈良醸造の20代の醸造スタッフ2名と醸造責任者・浪岡さんの対談を通じて、奈良醸造のビール造りについて掘り下げていければと思います。まずは自己紹介をお願いできますか。
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田中:田中と申します。滋賀県出身、2017年新卒で他のビール会社で3年間醸造を経験して、2020年より奈良醸造の醸造職で働き始めました。
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安田:よろしくお願いします。奈良醸造で好きなビールは何ですか?
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田中:全部ですが、思い入れがあるのは「QUO VADIS」です。前職ではドイツビールの伝統的な造り方だけを学んでいたので、QUO VADISでワイン酵母を使うと聞いて「あれ、僕が知ってるビール造りじゃないぞ」と面白く感じたのを覚えています。奈良醸造の中で一番思い出深くて好きなビールです。
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安田:ありがとうございます。それでは2人目、小川さん自己紹介お願いいたします。
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小川:小川です。2021年の12月に入社しました。入社前は新潟県で一年弱ビール造りをしていました。その前はIT系の仕事をしていたり、パン屋でパンを焼いたりしていました。パンとビールは酵母という繋がりがあるので、酵母に始まり酵母に戻ってきた、ということにさせてください(笑)。
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安田:酵母→IT→酵母なんですね(笑)。小川さんにも聞きたいのですが、奈良醸造で好きなビールは?
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小川:思い入れがあるのは、奈良醸造のビールで初めて飲んだNUTS AND MILKです。美味しすぎて、がぶがぶ飲んでしまいました。
安田:ありがとうございます。このお二方と浪岡さんで楽しく話して行けたらなと思います。
まず最初に伺いたいのは、今回のオンライン採用説明会にて、先ほど浪岡さんに奈良醸造の歴史とこれから目指したいことをプレゼンしていただきましたが、社員としての率直な感想はいかがでしょうか?
田中:その後に登壇することに緊張していてあまり聞けてなかったのですが・・・(笑)、話題に上がった、約2年前に缶充填機を導入するときの大変さが思い出されました。缶充填機の移送用の木箱を壊すのが凄く大変だったんですけど、ブルワーの仕事って結構そういう泥臭い仕事が多いなって改めて思いました。一般的には麦や酵母と触れ合っている仕事だと思われることが多いんですけど。
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安田:奈良のクラフトビールメーカーが缶を販売しているのは僕も印象的でした。クラフトビールって瓶に入っていることが多いですよね?缶充填機を導入するっていうのは結構大変なのではないですか?
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浪岡:奈良では初めての試みだったと思います。
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安田:コロナになって導入したんでしたっけ?
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浪岡:実は会社スタートの時からいずれ缶はやりたいなと思っていたんです。奈良って車社会なので、どうしてもお店にビールを飲みに行けない方って相当数いらっしゃる。もともとそういう方に缶でビールをお届けしたいと思っていたんです。そうしたらコロナになって外にビールを飲みに行けないという状況が続くようになった。もともと描いていた構想が思わぬ形で前倒して始まったという感じですね。
安田:届けるために手段を選ばないというか、無茶しちゃう感じが奈良醸造らしいなと思います。そして先ほどの田中さんの話を聞いても、ビール造りと言ってもまずは製造業なんだなと感じます。良いビールを届けるために、機械を整え、組織を整えて取り組んでいらっしゃいますね。小川さんはプレゼンを聞いてどうでしたか?
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小川:私が入社した時にはもうすでに缶充填機は導入されていたので、さっきのプレゼンの写真を見て初めて「わっ、木箱に入った状態で来たんだ」って思いました(笑)。その話を聞いて思い出した重労働があって。ビールの副原料は人の手で下処理をすることが多いんですけど、例えば大和橘のビールを造った時は大和橘を二日間ひたすら剝くっていう作業があったんですよ。あれはなかなか過酷でした(笑)。
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安田:今のところお二人からは過酷な重労働の話しかでてこないですね(笑)。でもビール造りというのはそういう作業が土台にある仕事なんですね。
<「世界に通用するビール」とは?>
安田:採用に際して掲げられているのが「世界に通用するビールをローカルから生み出し続ける」ということですが、世界に通用するビールってどういうものなんですか?
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浪岡:ひとつには、世界にはコンペティション・品評会がたくさんあって、そういう場で評価されるビールですね。名前やラベルがない状態で、透明なグラスに注がれたビール同士で比べても、「これが美味しい」ってなる。そういうのが世界に通用するビールなんだと思っています。そんなハイクオリティなビールを造っていきたい。
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安田:今の奈良醸造のビールをどう捉えていらっしゃるんですか?もっと上を目指せるとか、これを増やしていきたいとか何かありますか?
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浪岡:まだまだ美味しくなるんじゃないかっていうビールが沢山あります。これ以上ブラッシュアップできないっていうビールはまだないので、「これで完成」というビールもまだ持てていない状況です。
安田:なるほど。僕としては、30代まで未経験だった浪岡さんが会社を立ち上げて数年でこれだけのビールをつくり、世界を目指されていること自体がすごいことだなと感じています。
若手のお二人は浪岡さんとどういう役割分担でビール造りに携わってますか?
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田中:僕が入社した際、前職の経験もあったのですが、「醸造所によって任せられることが違うから」ということでビール造りの基礎を改めて教えてくださいました。ビールを仕込んだり、タンクを洗浄したり、ビール造りは品質に関わる繊細な作業が多いので、そこをいちから説明頂きました。それを引き継いで、今ではもうほとんどの工程は自分一人でできるような感じです。小川さんは今その状態を目指していろいろ覚えてもらっているところですね。
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安田:ビール造りのイメージって一人の職人が全工程を担うイメージだったんですけど、役割を分担して全員でビール造りを支えているという感じなんですね。それは一般的なことなのか、奈良醸造の特徴なのかどっちなんでしょう。
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浪岡:個人がその道を極めるというよりも、色んな人が知恵を出し合った方が良いものができると考えています。基礎の部分は伝えて、そのうえで「こうしたほうがいいのでは?」という提案があったら遠慮なく言ってほしいというのは入社時に伝えています。「俺の言う通りにしろ」っていうスタンスではやっていないです。
安田:小川さんは奈良醸造の雰囲気はどう感じていますか?
小川:奈良醸造は基礎がしっかりしていて、それを教えてくださいます。レシピだけじゃなくて、タンクの洗浄ひとつ、パーツの殺菌ひとつにしても、感覚的にやるのではなく、合理性に基づいた方法を教えてもらってます。「(浪岡さんに)言われることが全部正しいわけじゃない」と言われて入社しているので、疑問や考えを反映させながら働くことが出来ているという感じです。
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安田:先ほどのプレゼンで、醸造職の応募基準でビール造りは未経験でもOKと言っていたのを疑ってましたが(笑)、基礎が確立されて共有されるからこそなんですね。
一方で、ロジカルな考え方とか科学の知識とか、そういう勉強はたくさんしなくてはいけないのかなと思うのですが、そういう会話が普段から飛び交ってる感じですか?
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浪岡:飛び交ってますよ。(ホップ精油成分の化学的な)結合がどうとか(笑)。
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田中:そういう話ができる方が楽しく働けると思いますね。タンクを温めてその後に急冷したらタンク内の圧力はどうなるかとか。そういう科学的な知識があると、話し合いに参加しやすいです。
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浪岡:「タンクを急に熱すると危ない」ということが直感的にわかるような知識のバッググラウンドがあるといいですね。これに関しては、いちから僕らが教えるより、基礎知識として持ってくれているとありがたいですね。
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田中:僕はもともと文系だったので、その壁にぶつかって勉強しました。勉強したからこそ奈良醸造でうまく働けていると感じます。
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安田:僕がもともと抱いていたクラフトビールのイメージはやっぱり、醸造家が感覚的に造っていそうというものです。だから、クラフトビール造りの現場で化学式とかが飛び交う想像がつかないです(笑)。論理と感覚の両者の良さがあると思うんですが、論理的にビール造りに取り組まれていることの良さって何がありますか?
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小川:ロジカルに造るっていうのは再現性があるということ。美味しいビールをもう一度造ろうってなった時、感覚的に造っていたら絶対同じものはできない。
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田中:同じことを思っていました。
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浪岡:付け加えると、ロジカルに造ったら、失敗した時に「なぜ失敗したのか」を振り返りやすくなります。失敗の原因が分からないと改善できないので、そういう点でも論理的につくることが大事だと思っています。例えば、さっきも挙がった「QUO VADIS」は毎年12月にリリースしているんですけれど、味わいは残しつつ、どうやったらもっと美味しくなるかを考えて造っています。再現性の部分と改良部分を毎年積み上げています。
安田:少し話を変えちゃうんですが、奈良醸造のギャップは、ビール造りは論理的なんだけど商品名やデザインは感覚もすごい大事にされているところ。だって、「QUO VADIS」ってラテン語ですよね?そんな名前、普通つける?!(笑)っていう。ロジカルさとアーティスティックなセンスとのギャップが素敵だなっていつも思ってます。
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浪岡:もともとクラフトビールっていうのはビール市場全体の1パーセント程度しかシェアがないニッチなものです。そういうニッチなものを好む方って何かに強いこだわりがあったりすると思います。他にも、分かる人には分かる音楽の名前をつけてみたり、味わいだけでなく複合的な意味を込めてビールというカルチャーを楽しんでもらいたいんです。
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安田:浪岡さんの根底には「人を楽しませたい」という想いがあって、それがビール造りでもデザインの側面でも発揮されてるんですね。
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浪岡)そうですね。ビールは嗜好品なので、なおのこと楽しみを仕掛けたいです。ビールの中身は論理的だからこそ、外見は感性を大事に。
<新しい仲間に期待したいことは?>
安田:今回、世界に通用するビールを一緒に造る仲間を募集するということなんですが、その方に期待したいことはありますか?
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田中:「世界に通用するビールを造りたい!」と思って日々行動することが大切だと思います。ビールに関する研究、例えばホップに含まれている香りの成分がどうとか、そういうのは海外の方が文献が充実していています。それを勉強してビール造りに落とし込むのは面白いです。そういうインプットを普段からできるかどうか。
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小川:World Beer Cupというコンペティションがあり奈良醸造もエントリーしたんですが、今回は入賞できなかった。でもそれを糧に改善案を話し合ったり、そういうモチベーションで働けるのっていいなって感じました。新しく入る方とも一緒に働くのが楽しみです。
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安田:ビール醸造未経験でもいいので、志高く学んで世界を共に目指せる人を募集しているということですね。
世界を目指すうえで、拠点が奈良というのはハンデになったりしますか?逆にメリットなどはありますか?
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小川:奈良ではクラフトビールはまだまだ広まっていないです。そこはネガティブな部分ではあるけど、今後の伸びしろがあるとも思っています。その発展の拠点が奈良醸造になればいいなと思っています。
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安田:奈良でのビール造りはこれからですね。それも含めてやってやるぞ!と思える方に門を叩いていただければと思います。
<最後に>
安田:最後に、未来の仲間に一言いただいてトークを終われたらと思います。田中さん、代表してコメントいただけますか。
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田中:醸造職はビールを造るだけじゃなくて、泥臭い作業もたくさんあります。しんどいこともあるけれど、それが良いビールをつくるための基礎としてやっていることを理解して取り組んでくれる方だとずっと長く働けるかなと。あとは本当にチームで働くことが大事で、日々の仕事はもちろん、ビール造りのレシピの考え方なんかも議論し合っています。そういう携わり方ができる方にはぜひご応募いただきたいです。
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安田:ありがとうございました!経験問わず、バイタリティと熱意を持った方を募集しております!どうぞよろしくお願いいたします。