EIGHTY EIGHT
エイティエイト(2020)
ここ奈良の地で作られるお茶は大和茶と呼ばれ、その起源は古く大同元年(806年)に弘法大師が唐より茶の種子を持ち帰ったのが始まりだとか。昼夜の寒暖差が激しい大和高原、厳しい自然条件で栽培される大和茶は深みのある味わいが特徴です。
そんな奈良の茶処・月ヶ瀬で260年以上続く茶農家のティーファーム井ノ倉さんと知り合うきっかけがあり、とびきりの茶葉を提供いただけたことで、今回のコラボレーションは実現しました。
ティーファーム井ノ倉さん。
国内外の錚々たるホテルへ茶葉を出されている茶園であることは存じていたので、当主の井ノ倉さんとはじめてお会いしたときは大変緊張したものです。その後、奈良醸造のビール工場へも見学にお越しいただくなど、少しずつお話をさせていただくなかで、ビールにお茶(しかも、今年初物の一番茶)を使わせていただけると決まったときは、嬉しさとともにこの素材を生かさないといけないというプレッシャーが押し寄せました。
今回、ベースとなるビアスタイルは、セゾン。
ベルギーに起源を持つこのビール、もともとは夏の農作業中に喉の乾きを癒やすために造られていたと言われています。特徴はドライでドリンカブル。その上で、酵母の醸し出す香りに由来するフルーティさもあり、シンプルでいて、複雑さも併せ持つビールです。
このセゾンに、ティーファーム井ノ倉さんの茶葉、それも碾茶(てんちゃ)を贅沢に漬け込み、茶葉特有の味わいを重ねました。碾茶、聞き慣れない言葉かもしれません。一言で言えば、石臼で抹茶に挽く前の状態の茶葉のこと。独特の香り・旨味が強く、苦味・渋味が少ないことが特徴となっています。
見た目はお茶由来の薄濁り、香りはセゾン酵母由来のフルーティさが感じられます。ドライな飲み口の中に旨味を伴ったほのかな緑茶の風味が感じられ、爽やかな余韻として残ります。
ホップとは違ったお茶由来の苦味もこのビールに複雑さを重ねていて、セゾンの味わいにさらに奥行きが加わっています。少し温度を上げてから飲むと、よりお茶の輪郭がくっきりと感じられるようになってきます。
This time's collaboration was supported by Tea Farm Inokura, which has been in Tsukigase, Nara for more than 260 years, and provided us the green tea leaves that first flush in this season. The base beer style is Saison. This Belgian origin beer is said to have been originally made to serve as a clean source of hydration for workers during summer farming. The characteristic is dry and drinkable, also beer that is both simple and complex, with the fruitiness aroma that comes from the belgian yeast. It looks a little bit hazy because of the tea leaves pitching, and when you tilt the glass, you can feel aroma like fruit from saison yeast. Also you can enjoy a faint green tea flavor, and leaves a long finish. The bitterness derived from tea leaves, which are different from hops, add complexity to this beer, adding layer to the taste of saison. This is refreshing beer perfect for coming summer.